自己免疫性膵炎の症状は?自己免疫性膵炎
監修医師吉岡 藍子消化器内科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03
自己免疫性膵炎(AIP)とは
「自己免疫性膵炎(AIP)」とはどのような病気ですか?
自己免疫性膵炎とは、自分自身に対する免疫により、膵臓に炎症が起こる病気です。
自己免疫性膵炎とは、自分自身に対する免疫により膵臓の炎症が起こる病気です。本来は細菌やウイルスへの感染を防御するための免疫が、誤って自分自身の膵臓の細胞を攻撃してしまい、膵臓に炎症を起こすと考えられています。
炎症によって膵臓は固くなり、胆管を塞いで黄疸の症状が出たり、インスリンがうまく分泌されなくなり、血糖値が上昇し糖尿病となってしまう、といった合併症を引き起こします。
ステロイドという種類の薬が非常に有効であるという点も特徴です。しかし、再発することも珍しくないため、長期的な治療と経過観察が必要な病気です。
自己免疫性膵炎(AIP)の症状
自己免疫性膵炎(AIP)には初期症状はありますか?
軽度の腹痛が起こりえますが、無症状の場合も少なくありません。
自己免疫性膵炎の初期段階では、無症状の場合も少なくありません。膵臓に炎症が起こることで、初期には軽い腹痛や背中の痛みが起こる可能性があります。しかし、無症状の場合も多く、身体の症状だけで診断をすることは難しい病気です。
血液検査でIgG4のような自己免疫を疑う数値の上昇や、CT検査での膵臓の腫れが有用です。そのため、多くは健診や他の病気の精査をする過程の血液検査、画像検査で偶然見つかります。
このように自己免疫性膵炎の初期に特徴的な症状は乏しいため、健診などで異常を指摘された際には、症状の有無にかかわらず、医療機関での精査をおすすめします。
自己免疫性膵炎(AIP)ではどのような症状がありますか?
腹痛、黄疸、口渇などがありますが、無症状の場合も少なくありません。
自己免疫性膵炎では、病気による膵臓の炎症や、炎症の結果起こる合併症により症状が出現します。まず、腹痛や背部痛が挙げられます。膵臓に炎症が起こることで、お腹や背部に痛みを感じることがあります。
また、膵炎に伴う二次的な合併症による症状があります。例えば、膵臓に炎症が起こった結果、膵臓の中を走る胆管が狭くなってしまい、胆汁が流れなくなり、皮膚が黄色くなる黄疸の症状が出現することがあります。この場合、早急な治療が必要なため、すぐに医療機関を受診しましょう。
膵臓に炎症が起こると、血糖の上昇を抑えるインスリンの分泌もうまくいかなくなるため、糖尿病を発症します。その結果、糖尿病による喉の渇き、多飲多尿といった症状が出現することがあります。
このように、自己免疫性膵炎では多様な症状が起こりえますが、実際に出る症状は患者さんごとにさまざまであり、症状のない場合もあります。黄疸や、血糖上昇による喉の渇きなどは、急を要する場合が多いため、該当する症状があれば、すぐに医療機関を受診することをおすすめします。
自己免疫性膵炎(AIP)の原因
自己免疫性膵炎(AIP)の原因は何がありますか?
自己免疫性膵炎の原因は、まだ完全には解明されていません。
自己免疫性膵炎の原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、IgG4と呼ばれる、血液中の免疫に関するたんぱく質の数値が高くなること、ステロイド治療が有効なことから、免疫が自分の膵臓を誤って攻撃してしまう「自己免疫」が関与していると考えられています。
免疫の作用が根本原因にあるため、炎症は膵臓だけに限らず、腎臓、唾液腺、胆管、後腹膜など、全身のその他の臓器にも生じることがあります。また、日本には少ないですが、2型の自己免疫性膵炎は病気の仕組みが異なり、IgG4とは異なる原因で発症すると考えられています。
自己免疫性膵炎(AIP)の検査・診断
自己免疫性膵炎(AIP)のセルフチェックはできますか?
症状だけから自己判断することは困難です。
自己免疫性膵炎は、症状からのセルフチェックが難しい病気です。自覚症状としては、腹痛、背部痛、黄疸などが出現する可能性がある一方、無症状の場合もあります。また、これらの症状は自己免疫性膵炎に特徴的ではなく、胆石症、慢性膵炎など、そのほかの病気でも起こりえるものです。
自己免疫性膵炎の診断には、血液検査で免疫に関するたんぱく質である、IgG4という項目が上昇していることや、CT検査、MRI検査、お腹のエコー検査などの画像的な検査を行い、膵臓に特徴的な所見があるかといった情報が必要になります。
また、まれではありますが、膵がんでも似た症状が出る場合があるため、悪性のものでないか確認することも重要となります。
自己免疫性膵炎(AIP)の診断基準について教えてください。
血液検査、画像検査、病理検査、ステロイドの治療効果などで総合的に判断します。
自己免疫性膵炎の診断は、血液検査、画像検査、病理検査、治療効果などを総合的に判断します。自己免疫性膵炎で特徴的なのは、血液検査でIgG4という免疫に関する項目が上昇している点です。この項目は診断基準に含まれます。
また、自己免疫性膵炎によって膵臓に炎症が生じると、CTやエコー、MRIなどの画像検査で特徴的な所見が出現します。膵臓が全体的、あるいは部分的に腫れ、周囲に水がたまる様を画像検査で確認します。
そのほかに、細胞の検査や、ステロイドの治療で病変が改善するか、といった情報も診断基準に含まれています。
自己免疫性膵炎の診断基準には、上記のような情報が含まれており、これらをもとに総合的に診断を行います。
自己免疫性膵炎(AIP)の治療・対処法
自己免疫性膵炎(AIP)の場合、主にどのような治療をしますか?
ステロイドの飲み薬で治療を開始し、徐々に減らしていきます。
自己免疫性膵炎の治療の中心はステロイドです。自己免疫性膵炎に対しては、ステロイドの飲み薬が非常に有効であることがわかっています。原則的には、初めはそれなりに多い量から治療を開始します。
多くの患者さんでは治療開始後、数週間で膵臓の炎症は著明に改善します。場合によっては、始めの数週間は入院での治療となります。ステロイドは自己免疫性膵炎に有効である一方、長く、たくさんの量を飲んでいると、さまざまな副作用が出現します。そのため、治療開始後、効果を見ながら、徐々にステロイドの量を減らしていくことが一般的です。
完全に止めると再発することも多いため、ある程度少ない量で数年は続ける場合が多いです。
受診の目安・何科を受診するべきか
自己免疫性膵炎(AIP)が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?
消化器内科、胆膵内科を受診しましょう。
自己免疫性膵炎が疑われる場合、消化器内科、胆膵内科を受診しましょう。自己免疫性膵炎は膵臓の病気であり、消化器内科が専門としています。中でも胆膵内科が専門であるため、診療科があれば受診をおすすめします。
自己免疫性膵炎の診断には、IgG4のような自己免疫にかかわる血液検査のほか、CT、MRCPなどの画像検査が必要になります。また、膵臓の炎症により黄疸の症状が出た場合には、内視鏡(胃カメラ)でドレナージの処置が必要となる場合もあります。こういった内視鏡の処置も、消化器内科であれば行うことが可能です。
このように、診断のほか合併症に対し、専門的な処置が必要となる場合があるため、自己免疫性膵炎が疑われる場合には、消化器内科への受診をおすすめします。
自己免疫性膵炎(AIP)が疑われる場合、病院を受診する目安はありますか?
なんらかの検査で自己免疫性膵炎が疑われた場合、症状がなくても病院を受診することをおすすめします。
なんらかの検査で自己免疫性膵炎が疑われた場合、症状がなくても病院へ受診することをおすすめします。
自己免疫性膵炎は無症状であることも珍しくなく、診断には血液検査、造影CT検査などの画像検査が必要となります。また、症状がなくても知らない間に膵臓の炎症が進み、急激に糖尿病を発症したり、黄疸の症状が出現することがあります。
早期に治療することで、これらの合併症を未然に防ぐことができるため、例え症状がなくても疑いのある時点で、専門的な評価を受けることがおすすめです。
また、自己免疫性膵炎によって出現する膵臓の変化は、時に膵がんのような悪性腫瘍と見分けがつきづらいことがあります。まれではありますが、こういったものがないか確認することも含め、医療機関での精査をおすすめします。
自己免疫性膵炎の専門医がいる近くの病院はありますか?
自己免疫性膵炎の専門医がいる病院を見る自己免疫性膵炎(AIP)の経過・予後
自己免疫性膵炎(AIP)の場合、余命はどのくらいですか?
悪性の病気ではないため、適切な治療を行えば一般の患者さんと変わらない寿命を期待することができると考えられます。
自己免疫性膵炎は悪性疾患ではなく、適切な治療を行えば、一般の方と変わらない寿命を期待することができます。
自己免疫性膵炎に対しては、ステロイドがよく効くことがわかっており、治療を続けることで多くの場合、膵炎を抑えることができます。そのため、適切な治療を継続すれば、病気による体への影響はある程度コントロールが可能です。
一方で、長期的にみると、病気が再発することが珍しくないため、治癒したと思われたあとも定期的な検査をおすすめします。また、一部の患者さんでは、再燃を繰り返すことによって、膵臓に膵石ができたり、胆管が細くなったりして、急性膵炎や胆管炎など、さまざまな合併症が出てくる方もいます。こうした合併症は、時に命に関わります。
がんのような病気とは異なり、余命に関して過度な心配は不要ですが、定期的な検査と治療の継続が重要です。
対処法・セルフケア
自己免疫性膵炎(AIP)で薬が効かない場合、どうしたらよいですか?
ステロイド以外の免疫抑制剤を使用します。
自己免疫性膵炎の治療には、主にステロイドが使用されます。自己免疫性膵炎に対しては、ステロイドが非常によく効くことがわかっており、多くの患者さんでは速やかに症状や画像所見が改善します。
しかし、中にはステロイドでの治療が効きづらい患者さんも存在します。その場合には、そのほかの免疫抑制薬の使用が検討されます。具体的にはアザチオプリンやリツキシマブといった薬剤が挙げられますが、これらの薬剤の自己免疫性膵炎に対する効果についてはわかっていない部分が多く、使用は慎重に検討します。
そのほかに、悪性腫瘍の検査を再度を行う場合もあります。自己免疫性膵炎の検査所見は、時に膵がんと非常に似通っている場合があり、また、両者が合併していることもあります。そのため細胞の検査などを行い、悪性の可能性について再検討する場合もあります。
自己免疫性膵炎(AIP)に関連するその他の質問
自己免疫性膵炎(AIP)は女性に多い病気ですか?
日本では1型の自己免疫性膵炎が多く、中高年男性に多い傾向があります。
自己免疫性膵炎には1型と2型があり、わが国では、ほとんどの自己免疫性膵炎が1型です。1型の自己免疫性膵炎は中高年の男性に多いと言われています。
2型の自己免疫性膵炎には男女差がなく、比較的若い方が発症しやすいと言われていますが、日本では少なく、欧米で報告されることが多いと言われています。
そのため、自己免疫性膵炎は、わが国では全体としては男性に多い傾向があります。しかし、女性の患者さんも実際に存在することは認識しておく必要があります。
自己免疫性膵炎(AIP)の場合、食事で気をつけることはありますか?
この病気そのものによる食事制限はありませんが、血糖値や脂肪分には注意が必要な場合があります。
自己免疫性膵炎の場合、この病気そのものによる食事制限はありませんが、血糖値や脂肪分には注意が必要な場合があります。
自己免疫性膵炎では、自分の免疫が膵臓を攻撃してしまい、膵臓に炎症が発生します。それによって、膵臓で産生されるインスリンが出づらくなり、血糖値が上昇してしまいます。
その結果、糖尿病を発症する場合が多いため、自己免疫性膵炎の患者さんでは、糖尿病の治療も同時に必要となることが珍しくありません。そのため、血糖値の上昇には注意が必要です。
また、膵臓の炎症によって、膵臓の中を走る胆管が細くなり、黄疸の症状が出現する場合があります。このような状況では、脂肪分の摂取を避けるべきですが、比較的特殊な状況であり、普段の生活ではそれほど気にする必要はありません。
自己免疫性膵炎(AIP)の場合、どのような医療を受けられますか?
血液検査、CT検査などで診断され、主にステロイドでの治療となります。
自己免疫性膵炎は、血液検査、CT検査などで診断され、主にステロイドでの治療となります。この病気は、血液検査でIgG4のような自己免疫にかかわる項目が上昇していたり、CT、MRIなどの画像検査で膵臓の腫れ、周囲に水がたまっている所見などによって診断されます。
治療は、主にステロイドによる薬物療法で、ほとんどの場合ステロイドを開始することで、速やかに炎症は改善します。その後は再発に注意しながら、ステロイドの量を徐々に減らします。
再発することが珍しくない病気で、どのくらいの期間、どのくらいの量のステロイドを続けるかについては、患者さんごとに判断が必要となります。ステロイドを中止した場合にも、定期的な血液検査、画像検査が推奨されます。
自己免疫性膵炎(AIP)について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「自己免疫性膵炎」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 最近、白目や体の皮ふが黄色くなっていると感じますか?
- お腹の痛みがありますか?
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この記事の監修医師
吉岡 藍子
消化器内科・内科
消化器内科医の吉岡藍子と申します。 これまで大学病院や市中病院、健診センターでの内視鏡業務などを通して、消化器領域を幅広く経験してまいりました。 診療の現場では、専門的な用語や複雑な病状の説明に、患者様が戸惑いや不安を感じる場面に何度も出会いました。医療機関で提供される膨大な情報を前に、混乱されてしまう方も少なくありません。そこで、ご自身の病気や体、そして健康について、一人でも多くの方が正しく理解できる環境を作りたいという想いから、ユビーの活動に参加させていただいております。皆様が正しい医学知識に普段から触れ、安心してご自身の健康と向き合えるよう、分かりやすい情報提供に努めてまいります。 【経歴】 新潟大学医学部卒。 新潟県内外の市中病院、大学病院で勤務。 新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野にて博士取得。 2022年からユビーに入社し、横浜市で健診内視鏡診療を兼務。
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03