消化管間質腫瘍に初期症状はある?消化管間質腫瘍(GIST)
監修医師吉岡 藍子消化器内科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03
GISTとは
腸の壁の中にあるカハールの介在細胞というものが腫瘍となる病気です。
「GIST」とはどのような病気ですか?
胃や腸などの消化管にできる悪性腫瘍です。消化管の粘膜の下にある筋肉の層から発生します。
胃や腸の壁は内側から粘膜、筋肉、漿膜(しょうまく)という順に、組織が重なってできています。
GIST(gastrointestinal stromal tumor:消化管間質腫瘍)は筋肉の層にある細胞に異常がおき、細胞が無秩序に増えることで発生します。
GISTは消化管のどこにでも発生しますが、胃(50~70%)、十二指腸および小腸(20~30%)、大腸(5~10%)の順に多く、食道にできることはまれです。
GISTの発症率は年間10万人あたり約1人で、比較的めずらしい腫瘍(腫れ物やしこり)です。
GISTの症状
GISTには初期症状はありますか?
早期のGISTでは、ほとんど症状がありません。
GISTの初期症状はなく、胃カメラやバリウムの検査で偶然見つかることが多いです。
ある研究によると、胃で偶然発見された粘膜下腫瘍(粘膜の下に発生するタイプの腫瘍)のうち約半分はGISTであると報告されています。
GISTではどのような症状がありますか?
GISTの多くは無症状です。GISTが大きくなると、お腹の違和感や痛み、赤い便または黒い便などの症状が現れます。
GISTには特徴的な症状がありません。
小さなGISTは無症状であり、胃カメラやバリウムの検査で偶然見つかることが多いです。
GISTが大きくなると、周囲を圧迫してお腹の違和感や痛みなどの症状がでることがあります。GISTは消化管の粘膜の下の層から発生するため、小さいうちは消化管の壁の中にあります。しかし、GISTが大きくなり消化管の粘膜を破って内側に露出すると、GISTから出血して赤い便や黒い便がでます。出血によって貧血が進行すると、めまいやふらつきなどの症状が現れます。
GISTの原因
GISTの原因は何がありますか?
細胞の遺伝子変異が原因と考えられています。なぜ遺伝子変異が起こるのかはわかっていません。
消化管の筋肉の層には、カハール介在細胞という細胞があります。
このカハール介在細胞に遺伝子変異が起き、細胞増殖に関係する異常な蛋白質が作られることで細胞が無秩序に増えてGISTが発生します。
しかし、なぜカハール介在細胞に遺伝子の突然変異が起こるのかはわかっていません。また、飲酒や喫煙などの生活習慣との関連性も不明です。
GISTの検査・診断
GISTのセルフチェックはできますか?
無症状であることも多いためセルフチェックが可能なケースは少ないですが、症状検索エンジン「ユビー」もご確認ください。
GISTが大きくなると出血して赤い便や黒い便、貧血などの症状が現れることもあります。
ただし、赤い便や黒い便の症状は消化管出血を疑いますが、その出血は胃潰瘍や腸炎など、さまざまな消化管の病気でも起こります。
出血の原因がGISTであることはまれです。
GISTは血液検査で診断することができますか?
血液検査のみでは診断できません。
GISTは血液検査のみでは診断できません。もし血液検査で異常があっても、他の腫瘍や良性病変との鑑別はできず、補助的な検査として位置づけられます。
GISTには特有の腫瘍マーカーが存在せず、血液検査は一般的な体の状態を評価するために行われます。GISTの診断には画像診断と病理診断が必要です。
CTやMRI、内視鏡による画像検査で、腫瘍の大きさ、位置、転移の有無を確認します。画像検査でGISTの疑いがあれば、組織を採取して免疫組織染色を行い、KIT陽性またはDOG1陽性を確認して確定診断となります。
GISTの診断でPET検査を行うことはありますか?
PET検査を行うことはありますが、全員に必要な検査ではありません。
GIST(消化管間質腫瘍)の診断でPET検査(FDG-PET/CT)を行うことはあります。全員に必要な検査ではありません。
FDG-PETは腫瘍の代謝変化を捉えられ、CTやMRIで診断が難しい場合や遠隔転移などを詳しく調べる場合、薬物療法の効果判定を行う場合(現時点で保険未適用)に利用されることがありますが、診断時はCT、MRI、内視鏡検査が優先されます。
画像診断で不明瞭な場合、必要に応じてPET検査が行われます。病期診断や再発診断では、CTの感度93%、PETの感度86%と同等の精度を示すとされています。
GISTの検査にはどのような種類がありますか?
主に画像検査や病理検査を行います。
GISTの検査には、主に以下のようなものがあります。
CT検査
腫瘍の大きさ、転移の有無、周囲組織への浸潤を詳しく確認します。造影剤を使い、血管の状態も評価可能です。
MRI検査
CT検査と同様に、腫瘍の広がりを立体的に観察します。特に軟部組織の詳しい情報がわかるため、複雑な位置にある腫瘍の観察に役立ちます。
内視鏡検査、超音波内視鏡検査
胃カメラや大腸カメラ、超音波で粘膜下の腫瘍を観察します。必要に応じて組織を採取します。腫瘍の表面や深さを確認でき、早期発見に有効です。
病理検査(免疫組織染色)
採取した腫瘍組織を調べ、KIT陽性またはDOG1陽性が確認されればGISTと診断されます。
参考文献
国立がんセンター .“希少がんリーフレットGIST(消化管間質腫瘍)”..https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/GIST/no1.gist.pdf,(参照 2026-01-06).
.“GIST(消化管間質腫瘍)”.消化器難治癌シリーズ Ⅵ .https://www.jsge.or.jp/committees/intractable_cancer/pdf/GIST.pdf,(参照 2026-01-06).
日本医学放射線学会.“FDG PET/MRI診療ガイドライン2019”..https://www.radiology.jp/content/files/petmri_gl_2019_191226.pdf,(参照 2026-01-06).
GISTの治療・対処法
消化管間質腫瘍(GIST)への対処法は?
大きさや成長速度によって良性~悪性を判断するので、内視鏡検査やCT検査が必要になります。専門の医療機関で検査、治療します。
GISTの手術の入院期間はどれくらいですか?
手術方法や体の状態で変わりますが、約1~2週間です。
手術には、お腹を切開する開腹手術、腹部にカメラを挿入して行う腹腔鏡手術、そして腹腔鏡と胃カメラを組み合わせたLECS(腹腔鏡内視鏡合同手術)などの方法があります。
腹腔鏡手術は開腹手術に比べて、おなかの傷が小さく痛みも少ないため、回復が早く、一般的に入院期間が短くなります。
さらに、近年普及しつつあるLECSでは、GISTを胃の外側(腹腔鏡側)と内側(胃カメラ側)から同時に観察することで、GISTの位置を正確に見極めて最小限の範囲で切除することができます。
どの手術方法を選択するかは、GISTの位置や大きさ、そして病院の方針によって異なります。
また、既往症など元々の体の状態や、手術後の合併症の有無でも入院期間が変わります。
参考文献
Mitsuru Sugimoto et al. Drug treatment for chemotherapy-induced peripheral neuropathy in patients with pancreatic cancer. Fukushima J Med Sci. 2022, 68, p.1–10.
Shin Hoo Park et al.“Early experience of laparoscopic resection and comparison with open surgery for gastric gastrointestinal stromal tumor: a multicenter retrospective study”.YONSEI.https://yonsei.elsevierpure.com/en/publications/early-experience-of-laparoscopic-resection-and-comparison-with-op,(参照 2024-04-05).
GISTの場合、主にどのような治療をしますか?
GISTの大きさや広がりによって、手術・薬物療法などの治療法が選択されます。
転移のない切除可能なGISTの場合は原則、手術をします。
手術には以下のような方法があります。
- 開腹手術(お腹を切開する手術)
- 腹腔鏡手術(腹部にカメラを挿入して行う手術)
- 腹腔鏡と胃カメラを組み合わせたLECS(腹腔鏡内視鏡合同手術)
など
切除が難しい場合、転移がある場合、転移・再発リスクが高い場合は、分子標的治療薬を使用します。
分子標的治療薬とは、腫瘍細胞の増殖に関与する特定のタンパク質を標的にして、その働きを邪魔することで腫瘍細胞の増殖を抑える薬です。
受診の目安・何科を受診するべきか
GISTの名医の探し方を教えてください。
名医の判断基準は人それぞれですが、一般的には経験豊富な医師や専門施設を選ぶことが重要です。
GISTの名医の探し方に関して、以下に個人の見解を記載します。
GISTを放置するとどうなりますか?
腫瘍の進行により、通常のがんと同じように症状が出現したり、死に至る場合があります。
GIST(消化管間質腫瘍)は、胃や腸の壁に発生する腫瘍で、初期段階では症状が現れにくいため、放置されることがあります。
しかし、腫瘍が大きくなると、以下のような症状が現れることがあります。
- 吐き気や腹痛:腫瘍が消化管を圧迫することで、これらの症状が現れることがあります
- 出血:腫瘍からの出血により、黒い便(タール便)や血便がみられることがあります
- 貧血:慢性的な出血により、貧血が進行する可能性があります
また腫瘍が進行すると、周囲の組織に浸潤したり、転移したりすることで、通常のがんと同じように死に至る場合があります。
そのため、早めに発見し、適切な治療を受けることが重要です。
GISTが疑われる場合、何科を受診したらよいですか?
消化器内科を受診してください。
GISTの診断のためには、通常の内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)、超音波内視鏡検査、造影CT検査などを行います。
これらの検査は消化器内科で行うことが多いです。
消化管間質腫瘍(GIST)の専門医がいる近くの病院はありますか?
消化管間質腫瘍(GIST)の専門医がいる病院を見るGISTの薬
GISTは主にどのような薬で治療しますか?副作用はありますか?
イマチニブ(グリベック)という薬で治療をします。感染症にかかりやすくなる、貧血、発疹、むくみなどの副作用があります。
GISTの薬物療法では、イマチニブ(グリベック)という分子標的治療薬を使います。
分子標的治療薬とは、腫瘍細胞の増殖に関与する特定のタンパク質を標的にして、その働きを邪魔することで腫瘍細胞の増殖を抑える薬です。
イマチニブは、チロシンキナーゼという腫瘍細胞の増殖に関わる酵素に作用して、腫瘍細胞の増殖を抑えます。
副作用として、皮膚障害、むくみ、吐き気、下痢、骨髄抑制などがあります。
骨髄抑制とは、血液の細胞を作る骨髄の働きが抑えられて血液細胞が減ることで、貧血や血が止まりにくくなったり、感染症へかかりやすくなるなどの症状が出ます。
GISTの経過・予後
GISTの余命はどれくらいですか?
診断時のGISTの悪性度や広がり、体の状態などによって余命は大きく異なります。
GISTの余命は、GISTのできた部位、大きさ、悪性度、治療内容、年齢や合併症の有無などによって、大きく異なります。
米国のデータによると、GISTが一部に留まっている場合の5年生存率(診断から5年後に生存している方の割合)は94%、GISTと診断された時に他の臓器に転移があった場合の5年生存率は52%です。
対処法・セルフケア
GISTで薬が効かない場合、どうしたらよいですか?
イマチニブが効かない場合、スニチニブ、レゴラフェニブ、ピミテスピブの順番で、薬を選択します。
GISTの薬物療法では、最初にイマチニブ(グリベック)という薬を使います。
しかし、薬が効かずにGISTが大きくなったり、副作用が強くでた場合には、他の治療薬に切り替えます。
GISTのガイドラインでは、 以下のような順番で薬を飲むよう明記されています。
- イマチニブ(グリベック)
- スニチニブ(スーテント)
- レゴラフェニブ(スチバーガ)
- ピミテスピブ(ジェセリ)
つまり、1番の効果がなければ2番を投与し、それでも効果がなければ3番を投与するという具合に、順番に薬を選択します。
GISTの場合、日常生活で気を付けることはありますか?
定期的な画像検査を受けることが大切です。薬物療法中は、薬の副作用や体調変化に注意します。
GISTの疑いがある段階では、サイズが小さくても、定期的に内視鏡などの画像検査を受けて、サイズや腫瘍の見た目に変化がないか観察をすることが大切です。
手術で切除した場合は、GISTの再発がないかどうかを確認するため定期的に造影CT検査を受けます。造影剤が使用できない場合や、造影CT検査で診断が難しい場合はMRI検査を行います。
薬物療法を受けている場合は、薬の副作用が現れた場合にどう対応するか担当医からよく説明を受け、体調の変化に注意します。
GISTに関連するその他の質問
GISTと胃粘膜下腫瘍の違いを教えてください。
胃粘膜下腫瘍は胃の粘膜下にできる腫瘍の総称で、GISTはその一種です。
胃粘膜下腫瘍は胃の粘膜(一番内側を覆う膜)の下にできる腫瘍の総称です。
胃粘膜下腫瘍の中に、GIST、平滑筋種、神経鞘腫といった間葉系腫瘍と呼ばれる腫瘍や、膵臓の組織が本来の膵臓以外の場所にできる迷入膵、嚢胞や脂肪腫などが含まれます。
頻度としては間葉系腫瘍が最も多く、胃粘膜下腫瘍の68%を占めると言われています。
胃粘膜下腫瘍を認めた際には、超音波内視鏡検査や組織生検(組織を採取する検査)によって診断をつけ、治療方針を決定します。
GISTは胃の良性腫瘍ですか?
GISTは胃以外にも発生する悪性腫瘍です。
GIST(消化管間質腫瘍)は、胃に発生することが多いですが、小腸や大腸など他の腸の壁にも発生することがあります。
また、他臓器に転移する悪性特徴を持っているため、良性腫瘍ではありません。そのため、GISTは胃の良性腫瘍ではありません。
GISTは、胃がんや大腸がんと異なり、粘膜からではなく筋肉層から発生します。そのため、胃がんや大腸がんと比べ、周囲の組織に浸潤する傾向が少なく、リンパ節転移もまれです。
多くの場合、腫瘍の局所切除が行われます。しかし、腫瘍の大きさや悪性度によっては、手術後に抗がん剤による治療が必要となる場合もあります。
GISTは珍しい腫瘍ですか?
GIST(消化管間質腫瘍)は、胃や腸の壁に発生するまれな腫瘍です。
GIST(消化管間質腫瘍)は、胃や腸の壁に発生するまれな腫瘍です。
発症率は年間10万人に1~2人程度とされ、一般的な消化器がんと比較して珍しいといえます。
特に胃に多くみられ、次いで小腸、その他の消化管に発生します。
発症には男女差はなく、ほとんどの年齢層にみられますが、特に60歳代でピークを迎えます。
GISTは一般的ながんとは異なり、特殊な遺伝子変異が原因となることが多く、外科手術のほかに分子標的薬を用いた治療が有効とされています。
GISTについて、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「消化管間質腫瘍(GIST)」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 吐き気や嘔吐は食事をした直後に出て来ましたか?
- 最近の検査で便潜血を指摘されましたか?
GISTに関連する病気・症状
この記事の監修医師
吉岡 藍子
消化器内科・内科
消化器内科医の吉岡藍子と申します。 これまで大学病院や市中病院、健診センターでの内視鏡業務などを通して、消化器領域を幅広く経験してまいりました。 診療の現場では、専門的な用語や複雑な病状の説明に、患者様が戸惑いや不安を感じる場面に何度も出会いました。医療機関で提供される膨大な情報を前に、混乱されてしまう方も少なくありません。そこで、ご自身の病気や体、そして健康について、一人でも多くの方が正しく理解できる環境を作りたいという想いから、ユビーの活動に参加させていただいております。皆様が正しい医学知識に普段から触れ、安心してご自身の健康と向き合えるよう、分かりやすい情報提供に努めてまいります。 【経歴】 新潟大学医学部卒。 新潟県内外の市中病院、大学病院で勤務。 新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野にて博士取得。 2022年からユビーに入社し、横浜市で健診内視鏡診療を兼務。
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03