リンパ脈管筋腫症
監修医師折茂 圭介呼吸器内科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03
リンパ脈管筋腫症(LAM)とは
LAM細胞という異常な平滑筋様細胞が、肺や腎臓やリンパ節などで増殖する病気です。妊娠可能な女性に発症することが多い病気で、気胸(肺に穴が開く病気)を繰り返すことがあります。
「リンパ脈管筋腫症(LAM)」とはどのような病気ですか?
肺やリンパ節、腎臓などでLAM細胞と呼ばれる異常な細胞が増える病気です。ほとんどの場合、妊娠可能な年齢の女性に起こります。指定難病の1つです。
LAM細胞という異常な細胞の増殖によって起こる疾患です。LAM細胞の増殖は肺や腎臓、リンパ節などで起こりますが、特に肺が問題となることが多いです。LAM細胞が肺の中で増えることで正常な構造が壊されて嚢胞(のうほう)という袋状の構造物がつくられます。病気が進行すると息切れを起こします。結節性硬化症という疾患に合併するものと、そうではないもの(孤発性)に分けられます。男性や小児での発症も報告されていますが、ほとんどの場合、妊娠可能な年齢の女性に起こります。
リンパ脈管筋腫症(LAM)の症状
リンパ脈管筋腫症(LAM)では肺の症状が見られますか?
息切れ、咳、痰、喘鳴(ゼイゼイした呼吸)などの肺の症状が見られますが、無症状のこともあります。
リンパ脈管筋腫症(LAM)では主に肺に病変が生じるため、肺に関係する症状が起こりますが、診断時には無症状のこともあります。
具体的には以下のような症状が挙げられます。
また、気胸を起こすことが多いのがこの病気の特徴で、この場合は胸の痛みや息苦しさを感じます。肺の周りに水がたまる(胸水、乳び胸)こともあり、この場合には息苦しさが現れます。
病気が進行すると徐々に肺の機能が落ちてしまって、酸素療法が必要になるケースもあります。
LAMでは肺の症状のほか、体内にリンパ液が貯留することによるお腹の張りや足のむくみ、腎臓に腎血管筋脂肪腫と呼ばれる腫瘍(できもの)があると、腹痛・背中の痛みや血尿が現れることがあります。
参考文献
難病情報センター.“リンパ脈管筋腫症(LAM)(指定難病89)”.難病情報センター.https://www.nanbyou.or.jp/entry/173,(参照 2024-06-25).
日本呼吸器学会.“呼吸器の病気 リンパ脈管筋腫症(LAM)”.日本呼吸器学会.https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-06.html,(参照 2024-06-25).
日本呼吸器学会.“リンパ脈管筋腫症(LAM)診療の手引き2022”.日本呼吸器学会.https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/LAM_GL%202022.pdf,(参照 2024-06-25).
リンパ脈管筋腫症(LAM)ではどのような症状がありますか?
呼吸器の主な症状は息切れです。咳や血痰などの症状もあり、気胸を発症すると胸の痛みや呼吸困難が起こります。リンパ節や腎臓が原因の症状ではお腹の張りや腹痛、血尿が現れることもあります。
肺では病気が進行して肺嚢胞が増えると、息切れが生じます。嚢胞が破れると気胸を起こします。気胸になると突然の胸痛や呼吸困難が生じます。病気が息切れを起こすほど進行していない状態でも気胸が起こることがあります。異常な細胞がリンパ節・リンパ管で増えると、胸水や腹水がたまり、息苦しさやお腹の張りといった症状を引き起こすことがあります。腎臓では腹痛や血尿を引き起こすこともあります。
リンパ脈管筋腫症(LAM)の原因
リンパ脈管筋腫症(LAM)の原因は何がありますか?
遺伝子の変異が疾患の原因の1つと考えられています。ただし、未解明の部分もあるため原因が完全には分かっていません。
TSC1やTSC2といった遺伝子の変異が原因と考えられています。これらの遺伝子はmTORというタンパク質を抑制し、細胞の増殖や成長を調整しています。TSC1やTSC2が変異するとmTORが抑えられなくなり、細胞が増殖するとされています。ただし未解明な部分もあり、完全に原因が分かっているわけではありません。
リンパ脈管筋腫症(LAM)の検査・診断
リンパ脈管筋腫症(LAM)のセルフチェックはできますか?
セルフチェックでこの病気を疑うことは難しいですが、解説にあるような症状を認める場合は他の病気の可能性も含めて呼吸器内科の受診をおすすめします。
リンパ脈管筋腫症の症状は、他の呼吸器の病気にも共通する症状が多いため、セルフチェックで疑うことは難しいです。
また、診断にはCT検査が必須になりますので、以下のような症状などがみられる場合は、ほかの病気の可能性を含めて早急に呼吸器科を受診することをおすすめします。
この病気になる方は、妊娠可能な女性の年代が多いので、年齢や性別もある程度診断の手掛かりになります。ただし、他の年代や男性でも稀ですが発症することはあります。
どのような症状がきっかけでリンパ脈管筋腫症(LAM)と診断されますか?
息切れや気胸がきっかけとなり、診断されることが多いとされています。気胸の症状には突然の胸痛や呼吸困難があります。
動いているときの息切れや息苦しさの症状から診断される場合と、気胸になって発見される場合がそれぞれ約40%ずつあると報告されています。気胸の症状について詳しくはこちらをご覧ください。また、無症状のまま検診などで偶然発見されることもあります。
リンパ脈管筋腫症(LAM)と診断されていても妊娠はできますか?
妊娠は禁忌ではありませんが、リンパ脈管筋腫症の進行を早める可能性や気胸のリスクが高まる可能性が指摘されています。担当の医師や専門家とご相談ください。
妊娠によってリンパ脈管筋腫症の進行を早める可能性や気胸のリスクが高まる可能性が指摘されています。妊娠は大変重要な問題であり、妊娠の可否は患者さんそれぞれの状況によって異なるため、担当の医師や医療従者とカウンセリングを受けることが推奨されています。なお、リンパ脈管筋腫症の治療薬であるシロリムスは妊娠中に飲むことができません。妊娠の希望がある場合は、あらかじめ妊娠前から少なくとも12週間の休薬が必要です。
リンパ脈管筋腫症(LAM)の治療・対処法
リンパ脈管筋腫症への対処法は?
指定難病の一つです。呼吸器専門医がいる病院を受診してください。また、気胸を繰り返すことがあるので、息が苦しい時は病院を受診してください。
リンパ脈管筋腫症(LAM)は治りますか?
完治は難しいですが、病気が進行する場合には有効な治療法があります。
リンパ脈管筋腫症(LAM)は完治は難しい病気です。
症状や病気が進む速度は個人差が大きく、治療をせず定期的な通院のみで経過を見ることができる場合もありますが、肺の機能が悪くなってくる場合にはシロリムス(ラパリムスⓇ)という薬を使用します。肺機能の低下を抑える他、LAMによる胸水や腹水を減らすなどの効果もあります。副作用で使用できない場合や、効果が乏しい場合に女性ホルモンなどを使用した治療が考慮されることがあります。
その他に、病状に応じて気管支拡張薬や酸素吸入などの治療が行われたり、呼吸の障害が進行した場合は肺移植を行うこともあります。
合併症として気胸、胸水・腹水、腎血管筋脂肪腫がある場合には、症状に応じてそれぞれの合併症に対する治療を行うことができます。
リンパ脈管筋腫症(LAM)の場合、主にどのような治療をしますか?
シロリムスという飲み薬で異常細胞が増えることを抑える治療を行います。気胸などの合併症が起きた場合は、その合併症に対する治療も同時に行います。
細胞の増殖に関わるmTORというタンパク質の働きを抑えるmTOR阻害薬が第一選択薬となります。日本ではシロリムスという薬が承認されています。この薬でLAM細胞という異常細胞の増殖を抑えて病気の進行を妨ぎます。気胸などの合併症が起こった場合は、それに対する治療も行われます。吸入で気管支拡張薬を使うこともあります。場合によっては肺移植が適応になることもあります。
受診の目安・何科を受診するべきか
リンパ脈管筋腫症(LAM)が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?また、病院を受診する目安はありますか?
呼吸器科を受診しましょう。呼吸困難、咳、血痰など気になる症状がある場合は、早急に受診することをおすすめします。
呼吸器科の中でも大学病院など高度医療機関で治療をすることが多い病気です。症状からご自身でリンパ脈管筋腫症を疑うことは難しいと思いますが、呼吸困難や咳、血痰などを認める場合はほかの病気の可能性を含めて早急に呼吸器科を受診することをおすすめします。
リンパ脈管筋腫症の専門医がいる近くの病院はありますか?
リンパ脈管筋腫症の専門医がいる病院を見るリンパ脈管筋腫症(LAM)に関連するその他の質問
リンパ脈管筋腫症(LAM)になると障害者手帳がもらえますか?
呼吸の障害の程度に応じて、障害者手帳の交付を受けることができる場合があります。
リンパ脈管筋腫症(LAM)で、呼吸機能の障害が一定以上(社会活動が著しく制限される状態)になれば、身体障害者手帳の交付対象となります(呼吸機能障害1、 3、 4級)。
ただし、障害者手帳が交付されない場合でも、リンパ脈管筋腫(LAM)は「障害者総合支援法」の対象疾病に含まれているため、障害支援区分の認定・支給決定などの手続きをした後に、必要と認められたサービスを利用できます。
また、リンパ脈管筋腫(LAM)は指定難病に登録されていますので、重症度Ⅱ以上であれば医療費の助成を受けることができます。
ご自身が実際に対象になるかどうかや、具体的な手続きの方法などは、主治医や医療機関の担当窓口、お住まいの自治体の担当窓口でご確認ください。
参考文献
厚生労働省.“「障害者総合支援法」の対象となる疾病を332に拡大します”.厚生労働省.https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/332-2revised.pdf,(参照 2024-06-25).
厚生労働省.“障害者手帳”.厚生労働省.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html,(参照 2024-06-25).
難病情報センター.“リンパ脈管筋腫症(LAM)(指定難病89)”.難病情報センター.https://www.nanbyou.or.jp/entry/173,(参照 2024-06-25).
リンパ脈管筋腫症(LAM)の重症度はどのように決まりますか?
厚生労働省指定難病の重症度分類では、重症度I~IVに分類されています。
厚生労働省指定難病の重症度分類では、重症度をI~IVの4つに分けています。全身の病変ごとに重症度を定め、このうち最も高い重症度が「病気全体の重症度」として採用されます。評価に用いる具体的な項目は以下の通りです。
評価に用いる具体的な項目
呼吸機能障害と気胸
肺機能検査や動脈採血の結果によりI~Ⅳ、1年以内に気胸を発症していれば1段階上がる
腎血管脂肪腫(腎臓にできるできもの)
サイズや、動脈瘤を伴うか、症状があるかによりI~Ⅳ
乳び胸・胸水・腹水・リンパ浮腫
内科治療で制御できているかどうかによりⅡ~Ⅲ
リンパ脈管筋腫(リンパ節などにできるできもの)
症状があるかによりI~Ⅱ
リンパ脈管筋腫症(LAM)は子宮筋腫と関係がありますか?
LAMと子宮筋腫の発生には関係がないと考えられます。
LAMと子宮筋腫には、
- 構成する細胞の性質が似ている(※)
- 主に妊娠可能な女性に発症する
- 発症・進行に女性ホルモンが関わっている
などという共通点があります。しかし、LAMと診断された女性が子宮筋腫を併発している頻度について調べた研究では、その頻度はLAMでない女性と変わらないと報告されており、この2つの病気の関連は現時点では証明されていません。
※リンパ脈管筋腫症(LAM)は「平滑筋細胞」に似た特徴をもつ「LAM細胞」と呼ばれる異常な細胞が、肺や腎臓、リンパ節などでゆっくり増える病気です。一方、子宮筋腫は「平滑筋細胞」由来の良性腫瘍であり、主に子宮の壁に発生します。
参考文献
日本婦人科主要学会.“子宮筋腫”.日本婦人科腫瘍学会.https://jsgo.or.jp/public/kinshu.html,(参照 2024-06-25).
日本呼吸器学会.“呼吸器の病気 リンパ脈管筋腫症(LAM)”.日本呼吸器学会.https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-06.html,(参照 2024-06-25).
難病情報センター.“リンパ脈管筋腫症(LAM)(指定難病89)”.難病情報センター.https://www.nanbyou.or.jp/entry/173,(参照 2024-06-25).
A.M. Taveira-Dasilva, et al. Fertil Steril. 2011, 96(3), 711-714.e1.
シロリムスを使っていても授乳はできますか?
シロリムスは動物試験(ラット)で母乳中に移行することが報告されています。担当の医師や医療従事者とよくご相談ください。
リンパ脈管筋腫症の第一選択薬のmTOR阻害薬であるシロリムスは、動物試験(ラット)で母乳中に移行することが報告されています。この薬を使用している場合は、病気の治療と母乳栄養の影響を考えて、授乳を続けるかあるいは中止するかを決定します。授乳についても妊娠と同様に担当の医師とよく相談することをおすすめします。
リンパ脈管筋腫症(LAM)はどのように進行しますか?
リンパ脈管筋腫症の進行は一般的にはゆっくり進みますが、患者さんごとにさまざまです。
リンパ脈管筋腫症の進行は人によってさまざまであることが知られています。肺の場合も、呼吸の働きの低下が早い人がいる一方で、長期間にわたって働きがあまり低下しない人もいます。閉経後は進行が遅くなる傾向があることが知られています。病気の進行度に関わらず気胸の合併症が起こることがあり、気胸を繰り返してしまう方もいます。
リンパ脈管筋腫症(LAM)について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「リンパ脈管筋腫症」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 胸の痛みはありますか?
- せきが出ていますか?
- たんが出ていますか?
- 深く息を吸った時やせきをしたときに、より鋭い胸の痛みを感じますか?
- 息苦しさを感じますか?
リンパ脈管筋腫症(LAM)に関連する病気・症状
この記事の監修医師
折茂 圭介
呼吸器内科・アレルギー科・内科
東北大学医学部卒。東京都立駒込病院での初期研修を経て東京女子医科大学呼吸器内科入局。大学院で国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー感染研究部に国内留学。博士課程修了後、同研究室で研究員として勤務。専門は呼吸器内科学、特に喘息をはじめとするアレルギー学。
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03