尿素サイクル異常症の症状は?尿素サイクル異常症
監修医師濵﨑 秀崇はまさき医院 内科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2022/02/15
尿素サイクル異常症とは
遺伝的な異常のため肝臓でアンモニアを代謝できず高アンモニア血症を起こす病気です。
OTC欠損症とはどのような病気ですか?
オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)という酵素に異常が生じて発症する、尿素サイクル異常症で最も頻度が高い病気です。
OTC欠損症とは、オルニチントランスカルバミラーぜ(OTC)という酵素活性が低下、欠損することで発症する病気です。
尿素サイクル異常症の中で最も頻度が高いです。
専門的なご説明となりますが、「X連鎖性遺伝形式」で遺伝します。X染色体は性染色体のひとつで、女性は2本、男性は1本持っています。X連鎖性遺伝形式の場合、男性ではX染色体が1本しかないため、症状が重くなります。
治療は他の尿素サイクル異常症と同じですが、OTC欠損症に関しては、ウイルスベクターを用いて正常なOTCを発現させる遺伝子治療の治験が進められており、今後の臨床応用が期待されます。
「尿素サイクル異常症」とはどのような病気ですか?
肝臓において、身体の中で発生した有毒なアンモニアを無毒な尿素に変える「尿素サイクル」に先天的な異常がある病気です。
「尿素サイクル異常症」は、体内の「尿素サイクル」と呼ばれる代謝活動に先天的な異常がある病気で、高アンモニア血症を引き起こします。
人が食事として摂取したタンパク質は、体内でアミノ酸に分解され、エネルギーとして利用されるか体の構成タンパクとして使用されます。
一方、体がエネルギー不足になった時には、体を構成するタンパク質を分解してエネルギーへと変換します。このタンパク代謝の副産物として、有毒なアンモニアが生じます。アンモニアを無害な尿素に変換する経路が尿素サイクルです。
尿素サイクルは主に肝臓で働き、合成された尿素は最終的に尿中に排せつされます。
尿素サイクル異常症は、尿素サイクルを構成する代謝酵素などに先天的な異常があり高アンモニア血症をきたす病気です。先天性代謝異常症の中では最も頻度が高い病気のひとつで、尿素サイクル異常症に属する病気を合わせると、約8,000〜44,000人に1人の発生頻度と推定されます。
尿素サイクル異常症の症状
尿素サイクル異常症ではどのような症状がありますか?
血中にアンモニアが蓄積し「高アンモニア血症」となります。主な症状は、吐き気、多呼吸、けいれん、哺乳力の低下などです。
尿素サイクル異常症では、「高アンモニア血症」となり脳に障害をもたらすことで、さまざまな症状が見られます。
新生児発症型と遅発型で、以下のように症状が異なります。
【新生児発症型】
発症する時期
生後〜7日目
症状
傾眠傾向(反応が悪い状態)となり、哺乳不良や嘔吐、低体温が見られた後、過呼吸や呼吸不全、けいれんを起こします。急激に状態が悪化することも多いです。
【遅発型】
発症する時期
新生児から成人までいつでも起こり得ます。
症状
さまざまで、無症状の場合もあります。肉や魚といったタンパク質を嫌う食癖や生来のやせがあります。行動異常や精神状態の変化を起こすこともあります。感染症、怪我、急激なダイエット、授乳時などのストレスなどによって、急激に体のタンパク分解が亢進(高ぶって進むこと)する状況に置かれると、タンパク分解の結果アンモニアが上昇し、急激な意識レベルの低下をきたします。
その後、急性脳症や脳浮腫を起こし、けいれんします。
尿素サイクル異常症には初期症状はありますか?
尿素サイクルのどの酵素に異常があるかによって、発症時期や症状はさまざまです。
はい。尿素サイクル異常症には初期症状がありますが、他の病気との区別が難しいです。
以下に、新生児発症型と遅発型の初期症状について、目安となる発症時期や注意点を記載します。
【新生児発症型】
初期嘔吐や哺乳不良といった健常新生児でもよくある症状、あるいは感染症による活気低下と区別がつかない状態となります。
【遅発型】
残存している酵素活性などの影響で、発症年齢は生後数ヶ月〜70歳代とさまざまです。
高アンモニア血症の程度が軽い場合は、繰り返す嘔吐や行動異常などをきっかけに発見されることもあります。肉や魚が苦手で、麺類などの糖質を好む傾向が共通して見られます。また、睡眠障害や妄想、幻覚症状や精神障害も起こりえます。
尿素サイクル異常症の原因
尿素サイクル異常症の原因は何がありますか?
尿素サイクルで働く酵素の遺伝的な異常が原因です。
尿素サイクル異常症は、尿素サイクルの構成要素の遺伝的な異常が原因で生じます。
異常をきたす酵素や転送タンパクによって、以下のように分類されています。
【酵素の異常】
- Nアセチルグルタミン酸合成酵素欠損症(NAGSD)【NAGSの異常、図①】
- カルバミルリン酸合成酵素欠損症(CPS1D)【CPS1の異常、図②】
- オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)【OTCの異常、図③】
- オルニチンアミノ基転移酵素欠損症(OATD)=脳回転状脈絡網膜萎縮【OATの異常、図④】
- アルギナーゼ欠損症=アルギニン血症(ARGD)【アルギナーゼの異常、図⑤】
- アルギニノコハク酸分解酵素欠損症(ASLD)=アルギニノコハク酸尿症(ASA)【ASLの異常、図⑥】
- アルギニノコハク酸合成酵素1欠損症(ASS1D)=シトルリン血症(CTLN1)【ASS1の異常、図⑦】
【輸送体の異常】
- 高オルニチン血症・高アンモニア血症・ホモシトルリン尿症(HHH)症候群【ORNT1の異常、図⑧】
- シトリン欠損症(Citrinの異常)【シトリンの異常、図⑨】
- リジン尿性タンパク不耐症【Y+LAT-1の異常、図⑩】

尿素サイクル異常症の検査・診断
尿素サイクル異常症のセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
尿素サイクル異常症のセルフチェックは、限定的なチェックとなります。
以下の症状が見られる場合は、小児科や内分泌・代謝内科へご相談ください。尿素サイクル異常症を含む他の可能性も考慮し、専門医による詳細な診断が必要です。
「新生児発症型」が疑われる主な症状・状態
嘔吐、哺乳不良、活気不良(寝てばかりいる、低体温)が続く
「遅発発症型」が疑われる主な症状・状態
- タンパク質を嫌う食癖がある
- 行動異常
- 睡眠障害
- 幻覚、精神症状
共通
- 3親等内に尿素サイクル異常症の方がいる
- 新生児期に突然死した兄弟姉妹がいる
- シトルリン血症Ⅰ型とアルギニノコハク酸尿症は新生児スクリーニングの対象
尿素サイクル異常症の検査方法を教えてください。
血中アミノ酸と尿中有機酸を測定したのち、遺伝子検査を行います。
血中アミノ酸と尿中有機酸を測定したのち、遺伝子検査を行います。
問診
臨床症状と家族歴を評価し、嘔吐、痙攣、多呼吸、発達遅れなどの神経症状、3親等内の同疾患歴や新生児突然死を調べます。
血液検査
血中アンモニア測定、アニオンギャップ、血糖値を調べ、他の疾患を除外します。
血中・尿中アミノ酸分析
シトルリン血症I型ではシトルリン高値、OTC欠損症ではオロト酸尿中高値など、疾患に特異的なパターンの有無を確認します。
酵素活性測定、遺伝子解析など
肝生検や培養リンパ球で酵素異常を調べ、CPS1、OTCなどの遺伝子変異を同定して確定診断します。
血液検査
経過観察として、肝機能や腎機能、凝固機能、アンモニア値を定期的に確認します。アルギニノコハク酸尿症では毛髪のねじれ、アルギニン血症では麻痺の出現もチェックします。
尿素サイクル異常症の治療・対処法
尿素サイクル異常症への対処法は?
先天性の病気です。乳幼児期に異常が見られたら小児科を受診しましょう。
尿素サイクル異常症の場合、主にどのような治療をしますか?
主に食事療法や薬物療法で治療します。患者さんの状態や症状によっては、肝移植が行われることもあります。
尿素サイクル異常症の治療は、高アンモニア血症による症状が出ている「急性期」と、アンモニアが上昇しないように関する「維持期・慢性期」に分けられます。以下の通りです。
【急性期】
〜高アンモニア血症を是正することが目標〜
高アンモニア血症の程度により治療がステップアップします。
- 軽度:タンパク質の摂取を中止し、ブドウ糖輸液でエネルギーを補います。
- 中等度:上記に加え、必須アミノ酸とマルチビタミンを投与します。
- 重度:明らかな脳症が存在する場合や、上記の治療でアンモニア濃度が十分に低下しない場合は、血液透析を行います。血液透析で改善しない場合や、急性増悪を繰り返す場合は、肝移植の適応が検討されます。
【維持期・慢性期】
〜身体を構成するタンパクの分解を防ぎ、正常な発育発達を得ることが目標〜
糖質、脂質から十分なカロリーを摂取します。感染時に身体のタンパク分解が起こりやすいので、感染症のリスクを下げる努力を行います。ワクチン接種は必須です。また、発熱時には解熱薬を使用します。
幼少期のタンパク制限は低身長につながります。1〜3ヶ月に1回、血中のアミノ酸を評価し、不足するアミノ酸を補充します。
受診の目安・何科を受診するべきか
尿素サイクル異常症が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?また、病院を受診する目安はありますか?
乳幼児期に異常が見られれば小児科を受診しましょう。小児以上であれば内分泌・代謝内科などを受診してください。
尿素サイクル異常症が疑われる場合、小児期は小児科を受診してください。傾眠傾向(反応が悪い状態)や嘔吐、低体温など、気になる症状があれば、すぐにご相談ください。
小児以上であれば、内分泌・代謝内科を受診してください。
遅発型の症状はさまざまですので、具体的な受診目安は難しいですが、行動異常や精神状態の変化があればご相談ください。
多くのケースでは、精神症状で精神科、あるいはけいれんを起こして救急科を初診し、内分泌代謝内科へ紹介されることと思います。
尿素サイクル異常症の専門医がいる近くの病院はありますか?
尿素サイクル異常症の専門医がいる病院を見る尿素サイクル異常症に関連するその他の質問
尿素サイクル異常症は高アンモニア血症の原因になりますか?
はい。尿素サイクル異常症は高アンモニア血症の原因になります。
尿素サイクル異常症は、尿素サイクルを構成する代謝酵素などに先天的な異常があり、高アンモニア血症をきたす病気です。
アミノ酸の代謝で生じたアンモニアは、尿素サイクルで尿素へと解毒されます。そのため、尿素サイクル異常症ではアンモニアを分解できず高アンモニア血症をきたします。
特に、感染による発熱、怪我、栄養不足などで、身体のタンパクが分解されてエネルギーに変換される状況が亢進(高ぶって進むこと)しているときは、高アンモニア血症となりやすいです。
尿素サイクル異常症について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「尿素サイクル異常症」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 体重増加が同年齢の平均と比べて悪いですか?
- 体のだるさはありますか?
- 哺乳や食事の量が普段より少ないですか?
- 頭痛がありますか?あるいは頭が重いですか?
- 最近、普段とは違うおかしな行動をしていましたか?または、周りの人におかしな行動をしていたと指摘されましたか?
尿素サイクル異常症に関連する病気・症状
この記事の監修医師
濵﨑 秀崇 先生
はまさき医院 内科・糖尿病内科・内分泌・代謝内科
【経歴】 2002年 東京大学理学部 生物学科 卒業 2008年 広島大学医学部 医学科 卒業 2008年 国立病院機構横浜医療センター 研修医 2010年 国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 レジデント 2012年 国立国際医療研究センター国府台病院 内科 医師 2016年 自治医科大学大学院 医学系研究科 卒業 2017年 医療法人泰水会 濵﨑クリニック 医師 2022年 University of Derby MBA Global 修了 2024年 University of Manchester MRes Public Health 修了
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- 2026/10/27
- 公開日
- 2022/02/15