脊髄小脳変性症の症状は?脊髄小脳変性症
監修医師原瀬 翔平亀田総合病院 脳神経内科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03
脊髄小脳変性症とは
主に、ろれつが回らない、手足がうまく使えない、ふらつき等の小脳の症状が出現します。症状はとてもゆっくり進行します。脊髄小脳変性症の1/3は遺伝性と言われています。
「脊髄小脳変性症」とはどのような病気ですか?
小脳や周辺の神経細胞が正しく機能しなくなり、スムーズな運動の調節ができなくなる病気の総称です。
「脊髄小脳変性症」は、小脳や脊髄の神経系が徐々に機能を失い、バランスを保つことや正確な動作を行うことが難しくなる神経変性疾患の総称です。
うまく歩けなくなる、手足が震える、話すことが難しくなるなどの症状が見られるようになり、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
具体的には、小脳やその連絡路の線維の変性により、運動失調(運動に関係する動きの協調性が悪くなり、円滑にできなくなる)が生じます。病変が脊髄まで及ぶことがあるため、「脊髄小脳変性症」と病名がついています。
両足の筋肉の緊張と運動麻痺が主な症状である(遺伝性)痙性対麻痺も、一部では小脳症状が見られることがあり、特定疾患の制度上では脊髄小脳変性症の中に含まれています。
臨床的な観点や病理学的な観点、遺伝子的な観点で、異なるいくつかの病型が含まれています。
また、主体となる症状の違いから、制度上は多系統萎縮症と脊髄小脳変性症は別の指定難病として認定されます。
脊髄小脳変性症の症状
脊髄小脳変性症ではどのような症状がありますか?
歩行時にふらつく、手がうまく使えない、口や舌がもつれて話しづらいという症状が現れます。
脊髄小脳変性症は単一の病気ではなく、バランスを保つことや正確な動作を行うことが難しくなる神経変性疾患の総称です。主に、以下のような症状が見られます。
起立時・歩行時のふらつき
- 体幹失調
- 失調性歩行
など
四肢の運動失調
- 運動麻痺はないのに、上手に動かすことができない
など
構音障害
など
なお、主体となる症状の違いから制度上で別の指定難病とされていますが、多系統萎縮症では以下のような症状が見られます。
パーキンソニズム
- 無動
- 筋強剛
- 小刻み歩行
など
自律神経症状
など
錐体路徴候
- 痙性麻痺
- 腱反射亢進
など
脊髄小脳変性症の原因
脊髄小脳変性症の原因は何がありますか?
遺伝しないものの原因はまだ明らかではなく、遺伝性のものについてはいくつかの原因遺伝子が確認されています。
脊髄小脳変性症は主に、次のように分類されます。
- 遺伝しないもの(孤発性)
- 遺伝性のもの(常染色体顕性遺伝性、常染色体潜性遺伝性)
- 痙性対麻痺
- その他
原因については専門的な説明となりますが、次の通りです。
遺伝しないもの(孤発性)
遺伝しないものの大多数は、多系統萎縮症です。組織学的には神経細胞とオリゴデンドログリアに細胞変性が生じますが、変性が起こる根本的な原因はまだ解明されていません。
遺伝性のもの(常染色体顕性遺伝性、常染色体潜性遺伝性)
遺伝性のもの多くは顕性遺伝性で、我が国ではSCA-3(脊髄小脳失調症3型、マジャド・ジョセフ病)の頻度が最も高いです。SCA-3では、原因遺伝子の翻訳領域にCAG(シトシン、アデニン、グアニン)の3塩基の繰り返し配列が異常に増加し発症します。CAGの繰り返し配列はグルタミンをコードするため、異常に伸長したグルタミン鎖を含むタンパクが原因と考えられています。
脊髄小脳変性症の検査・診断
脊髄小脳変性症のセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
あくまで、脊髄小脳変性症を疑う参考としてのセルフチェックであれば可能です。疑わしい症状がある場合にはぜひ、医師へご相談ください。
「脊髄小脳変性症」の初期にみられやすい症状
- 転びやすい、うまく歩けないなど、歩行が不安定となる
- 頭位性めまい(頭を動かした際に、特定の位置になると生じるめまい)
- 動揺視(実際には止まっているものが揺れているように見える)
「脊髄小脳変性症」になりやすい人の特徴
- 家族に脊髄小脳変性症の方がいる
脊髄小脳変性症の治療・対処法
脊髄小脳変性症への対処法は?
ゆっくりと進行する小脳性運動失調を認める場合は、専門医を受診して相談してください。
脊髄小脳変性症の場合、主にどのような治療をしますか?
根本的な治療法はまだ確立していません。対症療法として、薬物療法やリハビリテーションを行います。
残念ながら、まだ脊髄小脳変性症の根本的な治療法や病状の進行を止める治療法はありません。
このため、現時点では、各症状に対しての対症療法が治療の主体となります。
例えば、薬物療法として、失調症状に対して甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)誘導体を、足のつっぱり感やめまい感に対してそれぞれのお薬を使用するなどしています。
また、リハビリテーションも重要で、歩行や立ち上がり・起き上がり、話すためなどのリハビリテーションを行い、それぞれの症状の改善をはかります。
脊髄小脳変性症ではどのようなリハビリを行いますか?
起き上がり、歩行、バランス保持の練習や、筋肉量の維持のためのリハビリを行います。
脊髄小脳変性症のリハビリには、理学療法、作業療法、摂食・嚥下療法があります。それぞれ、以下の通りです。
脊髄小脳変性症で行う主なリハビリテーション
理学療法
小脳失調、歩行障害に対して、バランスや歩行に対するリハビリを行うことで、症状の改善が期待できます。
作業療法
歩行バランスなどの基本動作訓練とADL(日常生活動作)訓練を行うことで、ADL(日常生活動作)の改善が期待できます。
摂食・嚥下療法
誤嚥性肺炎や脱水の予防、栄養状態の維持を目指します。症状に応じて、食形態や栄養補給法についての検討も行います。
受診の目安・何科を受診するべきか
脊髄小脳変性症が疑われる場合、何科を受診したらよいですか?
神経内科、脳神経内科、小児神経内科を受診してください。
脊髄小脳変性症を疑う症状が見られたら、成人の場合は、神経内科、脳神経内科を受診してください。
小児の場合は、小児科の中でも神経を専門にしている小児神経科を受診してください。
なお、発症初期にみられやすい症状として、以下のようなものがあります。
- 不安定な歩行
- 頭位性めまい(頭を動かした際に、特定の位置になると生じるめまい)
- 動揺視(実際には止まっているものが揺れているように見える)
脊髄小脳変性症の専門医がいる近くの病院はありますか?
脊髄小脳変性症の専門医がいる病院を見る脊髄小脳変性症の経過・予後
脊髄小脳変性症の寿命はどれくらいですか?
具体的な寿命のデータはありません。予後は患者さんによって異なります。
脊髄小脳変性症は、小脳や脊髄の神経系が徐々に機能を失う神経変性疾患の総称です。そのため、寿命や予後は一概には言えず、病型によって大きく異なります。
ただし、脊髄小脳変性症の寿命に関して研究した有効なデータは、確認できませんでしたので予後について解説します。
常染色体顕性遺伝性脊髄小脳変性症の進行は、多系統萎縮症に比べてゆっくりです。
多系統萎縮症については、我が国の研究でそれぞれ中央値(データを順に並べた際の真ん中の値)として、
- 発症後約5年で車椅子使用が必要になる
- 発症後約8年で臥床状態(ベッドに横たわる状態)となる
との報告があります。
また、多系統萎縮症では、声帯外転麻痺による睡眠中の呼吸障害が生じることで、突然死につながる可能性があります。
予後は患者さんごとに異なりますので、あくまでご参考程度にとどめてください。
対処法・セルフケア
脊髄小脳変性症で薬が効かない場合、どうしたらよいですか?
歩行リハビリテーションを行うこともあります。
脊髄小脳変性症は残念ながらまだ根本的な治療薬はありません。そのため、対症療法としての薬物療法に加えて、リハビリテーションを行います。
例えば、小脳失調に対しては運動失調や歩行の改善を期待して、リハビリ(バランスや歩行に関する理学療法)を集中的に行います。
また、一部の症状に対して外科的治療(脳深部刺激療法)を考慮することもあります。ただし、脳深部刺激療法が効果的とされる症状は限られます。
脊髄小脳変性症に関連するその他の質問
脊髄小脳変性症の重症度分類はどのようになっていますか?
運動機能、食事および栄養、呼吸についての各項目で症状を評価します。
脊髄小脳変性症の重症度分類は、mRS(modified Rankin Scale)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて行われます。
具体的な項目にはそれぞれ、以下の通りです。いずれかが3以上の場合、重症と判断されます。
mRS(modified Rankin Scale)
0. 全く症候がない
1.症候はあっても明らかな障害はない:日常の勤めや活動は行える
2.軽度の障害:発症以前の活動がすべて行えるわけではないが、自分の身の回りのことは介助なしに行える
3.中等度の障害:何らかの介助を要するが、歩行は介助なしに行える
4.中等度から重度の障害:歩行や身体的要求には介助が必要である
5.重度の障害:寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする
食事・栄養
0.症候なし
1.時にむせる、食事動作がぎこちないなどの症候があるが、社会生活・日常生活に支障ない
2.食物形態の工夫や、食事時の道具の工夫を必要とする
3.食事・栄養摂取に何らかの介助を要する
4.補助的な非経口的栄養摂取(経管栄養、中心静脈栄養など)を必要とする
5.全面的に非経口的栄養摂取に依存している
呼吸
0.症候なし
1.肺活量の低下などの所見はあるが、社会生活・日常生活に支障ない
2.呼吸障害のために軽度の息切れなどの症状がある
3.呼吸症状が睡眠の妨げになる、あるいは着替えなどの日常生活で息切れが生じる
4.喀痰の吸引あるいは間欠的な換気補助装置使用が必要
5.気管切開あるいは継続的な換気補助装置使用が必要
脊髄小脳変性症について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「脊髄小脳変性症」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 自力で立ち上がるのは難しいですか?
- 発音が正しくできないと感じますか?
- 頭痛がありますか?あるいは頭が重いですか?
- めまいがしますか?
- 最近歩行が不安定になり、何かにつかまらないと歩行出来なくなっていますか?
脊髄小脳変性症に関連する病気・症状
この記事の監修医師
原瀬 翔平
亀田総合病院 脳神経内科・内科
University of Washington (理学部、分子細胞生物学) 卒業後、アップルジャパン株式会社勤務を経て、琉球大学医学部に入学。沖縄県立中部病院での初期臨床研修(2016, 2017年度最優秀研修医賞受賞)修了後、2018年4月に亀田総合病院に入職。同院脳神経内科ベスト指導医(2019, 2020)を受賞。2018年から亀田総合病院卒後研修センター長補佐も兼任しており、臨床だけでなく研修病院における医学教育にも力を入れている。2021年には国立循環器病研究センター脳血管内科で超急性期脳卒中診療を行う。 総合内科の視野を持ちながらの脳神経内科領域、特に脳卒中を専門とする。急性期だけでなく予防、慢性期脳卒中による症候性てんかん、高次脳機能評価、リハビリ、等にも精通。頭痛、しびれ、物忘れ等の主訴にも柔軟に対応できる。 日本語、英語(ネイティブ)、中国語(日常会話)での対応も可能。
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03