神経因性膀胱の場合、主にどのような治療をしますか?

行動療法や薬物療法、カテーテルを用いた導尿が代表的で、改善しない場合は手術を行うこともあります。

解説

神経因性膀胱の原因の検査治療に合わせて、尿に関する症状に対しては以下のような対症療法を組み合わせて行います。

行動療法

時間排尿

尿意が弱まっている場合や、尿意を感じない場合などは、膀胱に尿が溜まりすぎないようにするため2~3時間毎など、時間を決めて意識的に排尿してもらうようにします。

膀胱訓練

尿が溜まっていなくても尿意を感じる場合、2時間などと排尿を我慢する時間を決めて過ごしてもらうようにします。膀胱にかかる圧力や残尿量によっては、悪影響を及ぼすことがあるため、担当医と相談して行いましょう。

骨盤底筋体操

くしゃみや笑った時、立ち上がった時などお腹に力を入れて尿が漏れてしまう腹圧性尿失禁がある場合は、尿道の付け根あたりにある骨盤底筋を意識的に締めたり緩めたりする運動を毎日行っていただきます。3ヶ月から半年程度で効果があらわれると言われています。

薬物療法

急に異常な尿意を催す、尿が出しにくいなどの症状に合わせて、抗コリン薬やα1遮断薬、コリン作動薬などを用いることがあります。過活動膀胱の症状に対しては、残尿量などを確認しつつ過活動膀胱の治療薬を使用します。
詳しくは「神経因性膀胱の治療薬には、どのようなものがありますか?」をご参照ください。

その他の保存療法

間欠的自己導尿

尿を出すときに圧力が強すぎる場合や、尿が出し切れず尿が膀胱に異常に残ってしまう場合は、とても細く柔らかいストロー状の管(カテーテル)を尿道から膀胱に入れて尿を外にだして、膀胱を空にする作業を1日数回行うことがあります。この方法はきちんと行うことで、発熱を伴う尿路感染症や腎機能の低下を予防できることが報告されています。手法によっては尿道を傷つけてしまう可能性があるため、医療機関でしっかり教えてもらいましょう。

尿道カテーテルの留置

やや細く柔らかいストロー状の管(カテーテル)を尿道から膀胱に入れて留置する方法です。頻回な自己導尿が困難な場合や、突然尿が出なくなった場合など、状況に応じて行います。約1ヶ月に1回交換することが多く、交換しつつ長期的に継続することもありますが、その場合は尿道を傷つけるリスクや尿路感染症、膀胱結石、尿道狭窄、膀胱がんなどの発生に注意する必要があります。

手術治療

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法

膀胱の壁にボツリヌス毒素を注入し、異常な尿意を抑える治療です。
詳しくは「過活動膀胱に対するボツリヌス療法とはどのような治療ですか?」をご参照ください。

仙骨神経刺激療法

膀胱の末梢神経を刺激させる電極を仙骨という骨の近くに留置し、その刺激によって異常な尿意を抑える治療です。治療を行える施設が限られており、症状が強いときは担当医と相談が必要です。

膀胱拡大術

腸の一部を利用して膀胱の容量を増やす手術です。腸は膀胱のように収縮しないため、間欠的自己導尿が必要になることが多く、その他の副作用もあるため、担当医と相談が必要です。

尿路変更術

導尿が難しい場合や、尿道カテーテルを長期間留置する必要がある場合などは、恥骨の少し上の体表から膀胱につながる穴(膀胱瘻)を作り、専用のカテーテルを留置することがあります。また、腸を袋状にして尿を溜める構造や、体外に尿を出せる構造(回腸導管)にする方法もあります。

公開日

最終更新日

東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学 泌尿器科

秋元 隆宏 監修

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(参考文献)

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