アジソン病の色素沈着について教えてください。

アジソン病における色素沈着は、病気を診断するうえで非常に特徴的で重要なサインです。これは、体内のホルモンバランスの乱れによって引き起こされます。

【なぜ色素沈着が起こるのか】

アジソン病では、副腎皮質からコルチゾールというホルモンが十分に分泌されなくなります。すると、脳の下垂体は「もっとコルチゾールを出せ」という命令として、 副腎皮質刺激ホルモン（ACTH）を大量に分泌します。
このACTHは、皮膚の色を作る細胞（メラノサイト）を刺激する「メラノサイト刺激ホルモン（MSH）」と非常によく似た物質から作られます。そのため、血液中にACTHが過剰になると、メラノサイトも強く刺激され、メラニン色素が過剰に作り出されてしまいます。この過剰なメラニン色素が皮膚や粘膜に沈着することで、体が黒ずんで見えるのです。

【色素沈着が現れやすい場所】

色素沈着は全身に見られますが、特に以下のような場所に現れやすいのが特徴です。

• 日光に当たる部分：顔、首、手の甲など（日焼けしたように見えます）
• 摩擦を受けやすい部分：肘、膝、脇の下、ベルトが当たる腰回りなど
• 皮膚のしわ：特に手のひらのしわ（手相）がくっきりと黒ずみます
• 粘膜：口の中（歯ぐきや頬の内側）や唇に、しみのような黒っぽい斑点が現れます。口の中の色素沈着は、他の病気ではあまり見られないため、特に重要な所見です
• 傷跡や爪：新しい傷跡が黒っぽくなったり、爪に黒い縦線が入ったりします

この色素沈着は、適切なホルモン補充療法を開始すると、原因であるACTHの過剰分泌が抑えられるため、数ヶ月から1年ほどかけて徐々に薄くなっていきます。