アジソン病で爪が黒くなるのはなぜですか?
副腎ホルモン不足を補おうと脳から出るホルモン(ACTH)が、メラニン色素の産生を刺激するため、皮膚や爪に色素が沈着し黒くなります。
アジソン病で爪や皮膚が黒くなるのは、病気によって体内のホルモンバランスが大きく崩れることが原因です。
アジソン病では、副腎皮質からコルチゾールというホルモンが十分に分泌されなくなります。すると、体はこれを「コルチゾールが足りない!」という緊急事態だと判断します。
この信号を受け取った脳の下垂体は、副腎にもっと頑張ってホルモンを作るよう命令を出すために、「 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)」という司令官のようなホルモンを大量に分泌します。
ここがポイントなのですが、この司令官ホルモンであるACTHは、皮膚や爪の色を作る細胞(メラノサイト)を刺激する「メラノサイト刺激ホルモン(MSH)」と非常によく似た構造を持っています。
そのため、血液中にACTHが過剰にあふれると、本来の目的である副腎への命令だけでなく、間違ってメラノサイトも強力に刺激してしまいます。その結果、メラニン色素が過剰に作り出され、皮膚だけでなく、爪の根元(爪母)にも沈着します。
爪母にメラニン色素が沈着すると、新しく作られて伸びていく爪に黒い色素が取り込まれるため、爪に縦方向の黒い線が現れたり、爪全体が黒っぽく見えたりするのです。これは皮膚の色素沈着(特に肘や歯ぐきなど)と並んで、アジソン病を診断するうえで非常に特徴的な身体所見となります。
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(参考文献)
Mara Carsote et al. Addison's Disease: Diagnosis and Management Strategies. Int J Gen Med. 2023, 16, 2187-2210.
Eystein S Husebye et al. Adrenal insufficiency. Lancet. 2021, 397, 613-629.
日本内分泌学会ほか. 副腎クリーゼを含む副腎皮質機能低下症の診断と治療に関する指針(最終版). 日本内分泌学会雑誌. 2015, 91, 1-78.
難病情報センター.“83 アジソン病”..https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/083-202404-kijyun.pdf,(参照 2025-12-26).
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福岡ハートネット病院、井林眼科・内科クリニック 糖尿病・内分泌科 福岡ハートネット病院 糖尿病内科部長
井林 雄太 監修
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