妊娠糖尿病の基準はなぜ厳しいのですか？

妊娠糖尿病の診断基準が、一般的な糖尿病よりも厳しく設定されているのは、お母さんとお腹の赤ちゃんの両方を、妊娠・出産に伴うさまざまなリスクから守るためです。

妊娠中は、お母さんの血糖値が少し高いだけでも、胎盤を通じて赤ちゃんに影響を与えてしまいます。大規模な国際研究（HAPO研究）によって、お母さんの血糖値が正常範囲をわずかに超えるだけでも、巨大児や新生児低血糖、妊娠高血圧症候群といった合併症のリスクが上昇することが明らかになりました。

つまり、一般的な糖尿病のように明らかな症状が出ていなくても、妊娠中においては「軽度の血糖異常」がすでに危険なサインとなるのです。

そのため、妊娠糖尿病の診断基準は、「病気を診断する」というよりは 「将来起こりうるリスクを抱えた妊婦さんを早期に発見する」ことを目的として、あえて厳しく設定されています。

この厳しい基準によってリスクのある妊婦さんを早期に見つけ出し、食事療法や運動療法といった適切な管理を始めることで、合併症の発生を未然に防ぎ、母子ともに安全な出産を目指すことができるのです。