夜驚症
監修医師阿部 吉倫内科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2022/02/15
夜驚症とは
入眠1~2時間後に突然泣いたりパニック状態になります。話しかけても正常な応答はありません。通常10分程度で終息しますが、時に30-40分続くこともあります。再び入眠し、翌朝、本人は症状を覚えていません。
「夜驚症」とはどのような病気ですか?
夜驚症は就寝中に突然激しい恐怖やパニックを示す睡眠障害の一種で、多くは自然に改善します。
夜驚症は、寝ている間に突然激しい恐怖やパニックを起こす、子どもに多い睡眠障害のひとつです。
多くは就寝後2~3時間ほど経った、深いノンレム睡眠の途中で起こります。発作時には、突然泣き叫ぶ、目を見開いて暴れる、何か怖いものから逃げるかのようにベッドから飛び降りることがあります。また、汗をかき、呼吸や脈が速くなるなどの症状がみられることもあります。本人は完全に目覚めていない状態のため、周囲が慰めたり落ち着かせようとしても反応は乏しく、子どもを落ち着かせることはできません。
発作は通常数秒から数分間続きます。発作が治まったあとは再び眠りにつき、翌朝には出来事を覚えていないことがほとんどです。週に2~3回、夜驚症を起こすこともあります。
原因ははっきりしていませんが、発達途中の脳の睡眠制御機構の未熟さが関係すると考えられています。発熱、疲労、睡眠不足、心理的ストレスや不安、睡眠障害の家族歴などがリスク要因になることがあります。発症年齢は3~7歳が多く、成長とともに自然に減少します。頻度は低いものの大人にも起こることがあります。
通常、夜驚症の健康への影響は少なく、ほとんどが思春期までに治るため、特別な治療は不要です。ただし、毎晩のように繰り返す、発作中にケガをしそうな行動をとる、学業や日常生活に支障がある場合は、小児科や睡眠専門医に相談がすすめられます。家庭では十分な睡眠時間を確保し、発作時は無理に起こさず、安全を確保することが大切です。
夜驚症の症状
夜驚症ではどのような症状がありますか?
夜驚症では夜間に突然激しい恐怖反応やパニックを起こしますが、翌朝には覚えていません。
夜驚症の症状は、寝ている間に突然起こる激しい恐怖やパニックで、叫ぶ、暴れるなどです。
夜驚症は、眠ってから2〜3時間ほど経った深いノンレム睡眠中に突然始まります。典型的には、突然泣き叫び、目を見開いて恐怖におびえた表情をし、手足をばたつかせたり布団から起き上がったりします。のたうち回ったり、蹴ったり、逃げようとしたり、ベッドから走り出すこともあります。呼吸や脈拍が速くなり、汗をかき、顔が赤くなることもあります。
発作中は目が覚めているように見えますが、実際には意識がなく、周囲が声をかけてもほとんど反応せず、親の顔を見ても認識できません。本人は完全には目覚めておらず、混乱した状態が数分から10分程度続いたあと、急に落ち着いて再び眠りにつきます。翌朝になると、ほとんどの場合で発作の記憶はありません。
症状は一見すると悪夢やてんかん発作に似ていますが、悪夢はレム睡眠中に起こり、本人が覚えていることが多く、てんかんは意識障害やけいれんを伴うなど発作の様子が異なります。夜驚症は健康な子どもにも起こる一過性の現象で、成長とともに自然に減少することが多いです。
一般的には、子どもに起こる病気ですが、成人にも発生する可能性があり、抑制や制止をされると攻撃的な行動を示すことがあります。
通常は成長に伴い自然に改善しますが、発作が頻繁に起こったり、睡眠を妨げたり、怪我をしたり、日中の活動に影響したりする場合は、医療機関を受診することをおすすめします。
夜驚症には初期症状はありますか?
夜驚症に明確な初期症状はありませんが、直前に動きや呼吸の変化が見られることがあります。
夜驚症には明確な初期症状はありません。ただし、発作の直前に見られる兆候がある場合もあります。
夜驚症の発作の多くは、就寝後2~3時間ほど経った深いノンレム睡眠の途中で起こります。発作は突然始まることが多く、いわゆる「前ぶれ」や典型的な初期症状ははっきりしません。ただし、よく観察すると、発作直前に軽い体の動きや表情の変化がみられることがあります。例えば、寝返りを繰り返す、うめき声を出す、眉間にしわを寄せる、呼吸がやや速くなるなどです。こうした変化は数十秒〜数分前に現れることがありますが、毎回必ず見られるわけではありません。
日中からの前兆としては、睡眠不足や極度の疲労、発熱、強い心理的ストレスがあると、その晩に夜驚症が起こりやすくなることがあります。また、普段よりも入眠後すぐに深い眠りに入りすぎると、脳の睡眠制御が乱れ、発作の引き金になることがあります。
ただし、初期のサインをとらえても、発作を完全に防ぐのは難しいため、予防には生活リズムの安定、十分な睡眠時間の確保、体調管理が重要です。発作時は無理に起こそうとせず、安全な環境を保つことが大切です。
通常は成長に伴い自然に改善しますが、発作が頻繁に起こったり、睡眠を妨げたり、怪我をしたり、日中の活動に影響したりする場合は、医療機関を受診することをおすすめします。
夜驚症の原因
夜驚症の原因は何がありますか?
夜驚症の原因は複数あり、睡眠の未熟さに睡眠不足や発熱、ストレスなどが重なり発症します。
夜驚症の主な原因は、子どもの脳の睡眠の仕組みが、まだ発達途中であることです。
夜驚症の原因は、ひとつの明確な病気や異常によるものではなく、複数の要因が関わるとされています。最大の背景は「睡眠の発達の未熟さ」です。子どもの脳は成長とともに睡眠のリズムや切り替えが整っていきますが、未熟な時期には深いノンレム睡眠から、次の睡眠段階へ移る際に混乱が生じ、夜驚症が起こりやすくなると考えられています。
また、誘因として以下がよく知られています。
- 遺伝的要因:家族に夜驚症や夢遊症の既往がある場合に、夜驚症を発症する可能性が高くなります。
- 睡眠不足や生活リズムの乱れ:寝る時間が遅くなる、昼寝不足などで深い眠りが増し、移行が乱れやすくなります。
- 発熱や病気:体調不良により、睡眠の質が変化します。
- 心理的ストレス:学校や家庭での環境変化、不安などが影響することがあります。
- 騒音や刺激:就寝中の物音や触れられる刺激がきっかけになることがあります。
- 医薬品:特定の薬物は、睡眠パターンに影響を与えてリスクを高める可能性があります。
成人では、他の睡眠障害、身体疾患、精神的ストレスに関連して起こることが多いとされています。アルコールやカフェインなども誘因として指摘されています。
多くの場合、原因は複合的で、単一の要因だけで起こることはまれですが、成長に伴い、脳の睡眠制御機能が成熟すれば、自然に改善することがほとんどです。
大人の夜驚症の原因や特徴を教えてください。
子どもと比べて頻度は低いものの、より複雑な心理的・医学的要因が関わっていることが多いです。
大人の夜驚症は、子どもと比べて発症頻度は低く、しばしば背景に他の睡眠障害や精神的要因が関わります。
【原因】
- 強い心理的ストレスやトラウマ:職場の過労、家庭不和、事故体験など
- 睡眠不足・不規則な生活:交代勤務や長時間労働など
- 他の睡眠障害:睡眠時無呼吸症候群やその他の睡眠障害など
- 薬やアルコールの影響:中枢神経に作用する薬、過剰飲酒、断酒後の離脱期など
- 精神疾患の併存:うつ病、不安障害、双極性障害、PTSDなど
- 神経疾患や脳損傷:片頭痛、頭部外傷後、認知症の一部で見られることもある
【発作症状】
- 子どもと同様、発作は深いノンレム睡眠中に起こる
- 急に叫ぶ、恐怖表情をする、暴れる、寝ぼけて歩くなどの行動がみられる
- 発作後に内容を覚えていないことが多いが、子どもに比べると、より詳細な記憶を持っている人もいる
- 子どもよりも発作が激しく、持続時間が長い傾向がある
成人の場合、夜驚症はそれほど一般的ではありませんが、「単なる成長期の名残」ではなく、より複雑な心理的または医学的要因に関連していることが多いため、二次的な原因の精査が重要です。また、根本的な障害に対処するなど、個別の治療アプローチが必要になる場合があります。睡眠専門医や精神科での診察・治療がすすめられます。
参考文献
Morgenthaler TI et al. Position Paper for the Treatment of Nightmare Disorder in Adults: An American Academy of Sleep Medicine Position Paper. J Clin Sleep Med. 2018, 14, 1041-1055.
Aurora RN et al. Best practice guide for the treatment of nightmare disorder in adults. J Clin Sleep Med. 2010, 6, 389-401.
夜驚症の治療・対処法
夜驚症への対処法は?
昼間の刺激を増やし覚醒時間を増やし、夜に十分な睡眠時間を確保しましょう。誘因となるストレスを除去します。改善が乏しければ受診を推奨します。
夜驚症の場合、主にどのような治療をしますか?
生活習慣の改善と安全確保が基本で、多くは自然に治まります。
夜驚症に通常薬物治療は必要ありません。基本となるのは生活習慣の見直しと安全確保です。
夜驚症は多くの場合、成長とともに自然に改善するため、治療が必要になることはほとんどありません。重要なのは環境整備です。
- 生活習慣を整える:十分な睡眠時間の確保と規則正しい生活リズムが重要です。寝る前はデジタル機器の使用を控え、静かな環境にします。リラックスできる習慣(読書、温かいお風呂など)も効果的です。
- 安全環境を整える:発作中の怪我を防ぐため、寝室から危険物を取り除きます。窓やドアには鍵をかけ、階段を塞ぎ、二段ベッドは避けましょう。
- 発作中の安全確保:無理に起こさず、周囲の障害物をどけるなどして怪我の予防を優先します。強く揺すったり大声で呼びかけたりすると、混乱や興奮が長引くことがあります。
発作の誘因となる発熱、不安やストレスを避けることも大切です。
症状が頻繁で生活に支障がある場合や、発作中に危険行動(階段を下りる、外に出るなど)がみられる場合には、医療機関へ相談してください。まれに就寝前に少量の抗不安薬や睡眠リズムを整える薬を使うことがありますが、これは慎重に判断されます。通常、子どもへの投薬は推奨されません。
毎晩、ほぼ同じ時間に発作が起こる場合、発作の約15分前に優しく起こす行動療法「予定覚醒法」が有効なこともあります。不安、トラウマ、その他の精神的問題が原因となっている場合は、認知行動療法やカウンセリングなどが役立つこともあります。
受診の目安・何科を受診するべきか
夜驚症が疑われる場合、病院を受診する目安はありますか?
頻発や危険行動、けいれんなどを伴う場合は早めに受診しましょう。
夜驚症が疑われる場合、頻度、危険行動の程度、日常生活への影響の程度、非典型的な症状の有無によって、受診を検討しましょう。
夜驚症は多くの場合一時的であり、成長とともに自然に治まります。健康への影響も少ないため、軽度・まれな発作では、必ずしも受診は必要ありません。ただし、次のような場合は病院での相談がすすめられます。
- 発作が30分以上続く
- 発作が週に何度も繰り返す、または数ヶ月以上続く
- 発作中に階段を下りる、外に出るなど危険な行動がある
- 日中の強い眠気や集中力低下など、生活への影響がある
- 全身のけいれんや硬直、よだれ・尿失禁を伴う
- 発作後も長時間意識がはっきりせず、混乱状態が続く
- 発熱や頭痛、嘔吐など、他の症状を伴う
- 初めての発作で家族が強い不安を感じる場合
一般的に、夜驚症自体は無害で、多くの場合、子どもは成長するにつれて治ります。治療や医学的評価が必要となるのは、夜驚症が安全上のリスクをもたらしたり、睡眠を著しく妨げたり、通常とは異なる症状を伴う場合に限られます。
まずは小児科で相談し、必要に応じて小児神経科や睡眠専門医へ紹介を受けましょう。他の疾患の可能性を除外するために、脳波検査や睡眠検査などの追加検査が推奨される場合もあります。受診時には、発作の様子を記録したメモや動画があると診断に役立ちます。
夜驚症の専門医がいる近くの病院はありますか?
夜驚症の専門医がいる病院を見る対処法・セルフケア
夜驚症で薬が効かない場合、どうしたらよいですか?
薬が効かない時は生活改善と予定覚醒法、専門医への相談を検討しましょう。
夜驚症で薬が効かない場合は、まず、薬以外の方法を見直しましょう。
夜驚症はそもそも薬が第一選択ではなく、多くは生活習慣の改善と安全対策で対応します。薬が効かない場合は、診断と根本原因や誘因を再評価し、非薬物的アプローチを強化することが大切です。
睡眠環境の見直し
就寝前のテレビ・ゲーム・スマホなどの刺激を減らし、暗く静かな環境を整える。
生活リズムの安定
毎日同じ時間に寝起きし、十分な睡眠時間を確保する。昼寝の取り方も調整する。
ストレスや疲労の軽減
学校や家庭での心理的負担を減らし、日中の活動量を適度に保つ。
予定覚醒法の導入
発作がほぼ毎晩同じ時間に起きる場合、その10〜15分前に優しく起こして浅い睡眠に切り替える。
併存症の評価
睡眠時無呼吸症候群やてんかんなど、ほかの病気が隠れていないかを再評価する。
持続的な夜驚症は、他の睡眠障害や精神疾患など、根本的な原因に関連している場合があります。睡眠専門医や小児神経科医に相談し、適切な評価を受けることが重要です。家族の記録や動画は診断に役立ちます。また、行動療法や心理療法は、特に薬物療法が効かない場合に効果的なことがあります。
薬物療法は通常、重症または持続性の症状に限って用いられ、多くの場合、非薬物療法と併用されます。薬物療法が効果を発揮しない場合は、医療機関を再度受診し、再評価を受け、薬物療法以外の治療法や専門医への紹介を検討することが重要です。
夜驚症に関連するその他の質問
子どもの夜驚症は何歳ごろまで続くことが多いですか?
多くは小学校低学年までには発作の回数が減少し、10代までに自然に改善します。
子どもの夜驚症は、多くの場合、10歳前後までに自然に治まります。
子どもの夜驚症は発達途上の脳の睡眠制御の未熟さが関係しているため、成長とともに自然に改善することがほとんどです。夜驚症は通常、幼少期に始まります。ときには1歳、2歳という早い時期に発症することもありますが、3歳から12歳の間に最も多く発症し、4歳から7歳の間に発症率がピークとなることが多いと報告されています。そして、子どもが成長するにつれて症状は軽減していく傾向があります。
多くの場合、小学校低学年(6〜8歳)までには発作の回数が減少し、10歳前後までにはほとんど消失します。まれに思春期まで続く場合もありますが、成人になる頃には自然に落ち着くことが一般的です。
通常、夜驚症は命に関わることは少なく、成長とともに自然に減少します。ただし、発作が続く期間については個人差が大きく、睡眠不足やストレスなどの明らかな誘因が改善されなければ、長引くこともあります。
危険な行動が頻回にある場合や発作が長時間続く場合は、小児科や睡眠専門医への相談が望ましいです。受診の際には、発作の頻度や発生時刻、持続時間、行動などを日記に記録する、発作の様子を動画に記録しておくなどすると、診断の助けになります。
夜驚症が起きたときの対応を教えてください。
無理に起こさず安全確保し、発作後はそっと寝かせるようにしましょう。
夜驚症が起きたときは、無理に起こそうとせず安全確保を最優先します。
発作中、子どもは完全に目覚めておらず混乱状態にあります。目は開いていても、周囲のことは認識できておらず、落ち着かせることは困難です。無理に起こすと、混乱や興奮、さらには暴力的な反応を引き起こす可能性があります。通常は数分で自然に治るため、パニックにならずに落ち着いて対応しましょう。
対応のポイントは、以下の通りです。
落ち着いて見守る
大声を出したり強く揺すったりせず、親自身も冷静に対応しましょう。拘束したりすることは避けてください。
怪我を防ぐ
ベッド周囲の家具や尖った物を遠ざけ、転落や衝突を防ぎます。窓やドアを施錠し、階段や危険な場所へのアクセスを遮断しましょう。
発作の様子を記録
動画やメモで発作の時間・持続時間・動作・誘因などを残すと診断に役立ちます。
発作後はそっと寝かせる
数分で落ち着き、再び眠ることが多いです。無理に起こす必要はありません。
環境を整える
暗く静かな部屋で、刺激を避けると発作の再発を抑えやすくなります。
通常、夜驚症は命に関わることは少なく、成長とともに自然に減少します。ただし、危険な行動が頻回にある場合や発作が長時間続く場合は、小児科や睡眠専門医への相談が望ましいです。受診の際には、発作の頻度や発生時刻、持続時間、行動などを日記に記録する、発作の様子を動画に記録しておくなどすると、診断の助けになります。
夜驚症について、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「夜驚症」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 睡眠時の異常行動を覚えていませんでしたか?
- 手や足が勝手に動くのは、毎回夜に発生しますか?
- けいれんのとき目は開いてましたか?
- 夜泣きをしていますか?
- 周りの壁などを叩いたりしていましたか?
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この記事の監修医師
阿部 吉倫
内科
2015年東京大学医学部医学科卒。東京大学医学部付属病院、東京都健康長寿医療センターで初期研修を修了。血便を放置し48歳で亡くなった患者との出会いをきっかけにデータサイエンスの世界へ。2017年5月にUbie株式会社を共同創業。2019年12月より日本救急医学会救急AI研究活性化特別委員会委員。2020年 Forbes 30 Under 30 Asia Healthcare & Science部門選出。
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2022/02/15