甲状腺眼症の眼窩減圧術とはどのような治療で、どのような人が対象になりますか?
眼窩の骨や脂肪を減らして空間を広げる手術で、重症例が主な対象です。
眼窩減圧術は、筋肉や脂肪組織によって、眼球の後ろが狭くなって起こる症状に対して、その空間そのものを広げる手術です。
眼窩減圧術で行うこと
甲状腺眼症では、眼窩(眼球が収まっている骨のくぼみ)の線維芽細胞が活性化し、水を抱え込む糖であるグルコサミノグリカンの産生、脂肪組織の増生、外眼筋(眼球を動かす筋肉)の腫大が起こります。その結果、上眼瞼後退や眼瞼腫脹、眼球突出が起こり、重症例では眼球運動障害や視力低下が生じます(甲状腺眼症診療の手引き)。眼窩減圧術は、この狭くなった空間を広げて眼球や視神経にかかる圧を逃がす手術で、大きく2つの方法があります。
- 骨減圧術:眼窩の骨(内側壁や下壁など)を削って容積を広げる
- 脂肪減圧術:増えた眼窩内の脂肪を減らす
鼻の穴から内視鏡を入れて行う方法(内視鏡下経鼻腔眼窩減圧術)は、皮膚を外から切らずにすむため整容面で優れるとされています(耳鼻咽喉科展望)。
眼窩減圧術の対象になる人
対象となるのは、主に次のような場合とされています(甲状腺眼症の診断基準と治療指針2023)。
- 失明の危険がある最重症例(甲状腺性視神経症)で、ステロイド・パルス療法を始めて2週間たっても改善がみられない場合
- パルス療法と放射線外照射を行っても効果が不十分な再発例・難治例
- 炎症が落ち着いた非活動期に、視機能の回復や見た目の改善を目的とする場合
日本では、甲状腺性視神経症の患者さんの22.3〜38.6%で眼窩減圧術が必要だったと報告されています。
眼窩減圧術を検討するタイミング
炎症が活発な活動期には、まず免疫抑制療法や放射線外照射が行われ、眼窩減圧術は視神経症で急を要する場合を除き、炎症が落ち着いてから検討されます。非活動期の手術には眼窩減圧術のほかに外眼筋手術、眼瞼手術があり、どれを選ぶかは一人ひとりの状態で検討するとされています(甲状腺眼症診療の手引き)。気になる症状があるときは、医療機関への相談をご検討ください。
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(参考文献)
日本甲状腺学会・日本内分泌学会「甲状腺眼症診療の手引き Digest版」https://www.j-endo.jp/uploads/files/edu/koujyousengansyo_digest.pdf.(参照 2026-10-17).
日本甲状腺学会・日本内分泌学会「バセドウ病悪性眼球突出症(甲状腺眼症)の診断基準と治療指針2023(第3次案)」https://www.j-endo.jp/uploads/files/edu/koujyousengansyo_3.pdf.(参照 2026-10-17).
竹野幸夫, 木村徹, 石野岳志, 堀部裕一郎, 高原大輔. 甲状腺眼症に対する内視鏡下経鼻腔眼窩減圧術. 耳鼻咽喉科展望. 2019;62(5):198-208.
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東北大学病院 眼科
山口 知暁 監修
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