下垂体炎の場合、主にどのような治療をしますか?

欠乏しているホルモンの補充療法が基本で、副腎不全の治療を最優先とし、ヒドロコルチゾンを補充します。炎症や神経圧迫症状には高用量ステロイド療法を行い、重症例では手術療法や免疫抑制剤投与も検討されます。

解説

1. ホルモン補充療法

下垂体炎による下垂体機能低下症の治療において、最も基本的な治療法です。以下のように不足ホルモンに対する補充を行います。

  • 副腎皮質刺激ホルモン欠乏→ ヒドロコルチゾン(コートリルⓇ15〜25mg/日)を1日2回に分けて投与します。副腎不全は命に関わるため、最優先で補充します。
  • 甲状腺刺激ホルモン欠乏→ レボチロキシン(チラーヂンⓇ)を補充します。副腎不全を防ぐため、必ず副腎機能が改善したあとに開始します。
  • 性腺刺激ホルモン欠乏→ 男性にはテストステロン、女性にはエストロゲン・プロゲステロンを補充します。
  • 成長ホルモン欠乏→ 成人では症状が重く、一定の基準を満たす場合のみ成長ホルモン補充療法の適応となります。
  • 抗利尿ホルモン欠乏による中枢性尿崩症→デスモプレシンを投与します。

2. 高用量ステロイド療法

炎症を抑えて、下垂体腫大による圧迫症状(頭痛や視野障害)を改善させる目的で行います。
初期はプレドニゾロン40~60mg/日、またはメチルプレドニゾロンのパルス療法(500~1000mg/日を3日間)などが行われます。
効果があれば、2~6週で漸減中止します。頭痛や視野障害の改善率は高いですが、再燃する可能性もあります。

3. 外科的治療

下垂体腫瘍と見分けるのが難しく、診断目的の生検(特に下垂体茎の病変や視野障害がある方)が必要な場合や、ステロイド療法に反応せず神経圧迫症状が進行するようなケースでは、手術(経蝶形骨的下垂体手術)が行われます。

4. 免疫抑制療法・放射線治療

ステロイド無効例やIgG4関連下垂体炎などに対しては、アザチオプリン、メトトレキサート、リツキシマブなどの免疫抑制薬が検討されます。
一部の難治例では、放射線治療も行うと報告されています。

5. 経過観察

ホルモン欠乏が軽く、神経圧迫症状がなく、MRIの画像上あまり大きな異常がみられない場合には、経過観察のみで対応することもあります。自然寛解するケースも報告されています。

治療開始後は、定期的なMRI検査と、ホルモン値の測定による内分泌機能のフォローアップが必要です。

炎症が治まっても、下垂体の萎縮やホルモン欠乏が残存するケースが多く、長期のホルモン補充が必要になります。

公開日

最終更新日

医療法人社団メレガリ うるうクリニック関内馬車道 糖尿病・内分泌科

濵﨑 秀崇 監修

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