お腹の下の方の痛みがある
監修医師吉岡 藍子消化器内科
- 更新日
- 2026/07/09
- 公開日
- 2021/01/18
概要
下腹部が痛いとは、へそより下の腹部に痛みを感じる状態です。膀胱炎では排尿時痛と共に下腹部の不快感が出現し、女性では子宮内膜症や卵巣嚢腫が原因となることもあります。虫垂炎では右下腹部に限局する痛みが典型的です。急な激痛や発熱を伴う場合は、消化器内科や婦人科での速やかな精査を検討してください。
下腹部の痛みとは
「下腹部の痛み」とはどのような症状ですか?
へそより下側のお腹が痛む症状です。痛みの原因や重症度によって、さまざまな痛み方があります。
痛みの原因によって痛む部位が異なります。下腹部全体が痛むこともあれば、右下腹部、左下腹部など部分的に痛むこともあります。
また、痛み方も以下のように多岐にわたります。
- ズキンズキンと脈打つような痛み
- ズーンと重くなるような鈍い痛み
- ごろごろと腸が動くような痛み
- お腹が膨れて張るような痛み
下腹部の痛みの原因
ストレスが原因で下腹部に痛みが生じる可能性はありますか?特に女性の場合に起こることはありますか?
過敏性腸症候群や女性の慢性骨盤痛はストレスで痛みが悪化します。
過敏性腸症候群は腸に異常がないにもかかわらず、腹痛や便秘、下痢などの症状が起こる病気です。ストレスによって症状が悪化します。
女性の慢性骨盤痛は、ストレスや不安、抑うつなどが影響すると報告されています。治療のために抗うつ薬・抗不安薬の服用や、カウンセリング療法などを行うことがあります。
下腹部の痛みを引き起こす日常生活上の原因としては、何が考えられますか?
ストレスや暴飲暴食、運動不足などが原因で下腹部痛が生じることがあります。
下腹部痛は、便秘や過敏性腸症候群、慢性前立腺炎など生活習慣に関連する病気が原因で引き起こされる事があります。
便秘や過敏性腸症候群
便秘や過敏性腸症候群は、ストレスや暴飲暴食、運動不足などが原因となって引き起こされることが多いです。
慢性前立腺炎
慢性前立腺炎は、過度な疲労やストレスが発症の引き金になって下腹部痛を引き起こす場合があります。
下腹部の痛みの原因に精巣上体炎の可能性はありますか?
精巣上体炎の可能性はあります。尿道からの細菌感染が原因です。
精巣上体炎は、尿道(膀胱から尿の出口までの通り道)から菌が逆流して感染することで起こります。淋菌やクラミジアなどの性感染症や前立腺肥大症、糖尿病があると発症する可能性が高くなると言われています。
主な症状は陰嚢痛や陰嚢の腫れ、発熱、倦怠感ですが、下腹部痛を生じることがあります。抗菌薬で治療をします。
下腹部の痛みの原因に子宮外妊娠の可能性はありますか?
子宮外妊娠の可能性はあります。生理が来ない、不正出血、下腹部痛などが典型的な症状です。
子宮外妊娠は、受精卵が子宮の中に到達する前に、卵管という卵巣から子宮に繋がる管の部分に留まってしまい、そこで妊娠を継続する状態です。細い管の部分なので、そのまま育ってしまうと管が腫れて破裂する可能性があります。破裂で大量出血すると、ショック状態になることがあります。
予定通り生理が来ない中で、腹痛や不正出血が起こって診断されることが多いです。診断のために超音波検査や妊娠検査を行います。
下腹部の痛みの原因に急性虫垂炎の可能性はありますか?
急性虫垂炎(俗に言う「もうちょう」)の可能性はあります。胃のあたりの痛みから始まり、右下腹部に痛みが移動することが典型的です。
「虫垂」とは、お腹の右下にある大腸にくっついている管状の臓器を指します。虫垂が炎症で腫れあがった状態を「急性虫垂炎」と言います。
急性虫垂炎は胃のあたりのはっきりしない痛みから始まり、食欲不振や嘔気・嘔吐を伴い、炎症が悪化するにつれて右下腹部に痛みが移動する流れが典型的です。
ただし、はじめから右下腹部が痛む場合や、腰痛が主な症状のこともあります。
下腹部の痛みの原因に急性胃腸炎の可能性はありますか?
急性胃腸炎の可能性はあります。下痢や嘔吐などの症状を伴うことが多いです。
急性胃腸炎(感染性腸炎)は、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、ノロウイルスなどの細菌やウイルスが原因となり、腹痛や下痢、嘔吐を引き起こします。
高熱や血便、脱水などの症状がある場合は、病院での検査・治療が必要です。
女性で下腹部が痛む場合、どのようなことが原因として考えられますか?
生理痛・排卵痛・異所性妊娠・卵巣茎捻転などの病気が原因として考えられます。
女性で下腹部が痛む場合は、下記のような病気も考えられます。婦人科を受診しましょう。
生理痛・排卵痛
生理痛・排卵痛は頻度が高く、過去の経験や生理周期などから自分で認識できることがあります。
異所性妊娠
異所性妊娠は無月経、性器出血、下腹部痛が特徴的です。
卵巣茎捻転
卵巣茎捻転は卵巣が捻じれることで下腹部痛、悪心・嘔吐、発熱などの症状が起きます。
へそ周りのチクチクする痛みの原因となる病気には何がありますか?
便秘、過敏性腸症候群、急性虫垂炎の初期症状などの病気があります。
便秘や過敏性腸症候群は腸の動きに問題があり、腸にガスが溜まったり、腸が過剰に動いたりすることでへそ周りの痛みが起こる場合があります。
急性虫垂炎は悪化すると右下腹部が痛くなることが一番多いですが、初期の段階では上腹部~へそ周りの曖昧な痛みとして感じることがあります。
お腹が張るような痛みの原因となる病気には何がありますか?
便秘、過敏性腸症候群、腸閉塞、呑気症などの病気があります。
便秘や過敏性腸症候群
便秘や過敏性腸症候群は腸の動きに問題があり、便やガスが溜まることでお腹が張るような痛みが起こります。
腸閉塞
腸閉塞はさまざまな原因で腸が捻じれたり、つまったりする病気です。腸の内容物が排泄されずに溜まってしまうために腸が張って痛みが引き起こされ、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
呑気症
呑気症は過度に空気を飲み込んでしまうため、腸にガスが溜まりお腹が張るような痛みを引き起こします。ストレスや食事中のおしゃべり、喫煙、ガムを噛むなどの行為は、呑気症を悪化させます。
下腹部の鈍痛が続く原因となる病気には何がありますか?
前立腺炎・精巣上体炎のような泌尿器の病気、月経困難症・卵巣茎捻転など子宮や卵巣の病気、便秘・腸炎など腸の病気が考えられます。
前立腺炎や精巣上体炎は尿道(膀胱から尿の出口までの通り道)からの細菌感染で生じ、下腹部の鈍痛が生じることがあります。排尿時痛、頻尿、発熱、尿が濁るなどの症状を伴います。
月経困難症や卵巣茎捻転によっても、下腹部の鈍痛が起きることがあります。
また、便秘や腸炎など腸の病気でも鈍痛が続く場合があります。
どのような病気が下腹部の痛みの原因として考えられますか?
便秘や急性虫垂炎、膀胱炎、生理痛、異所性妊娠などが原因として考えられます。他にもさまざまな病気が原因になります。
下腹部痛の原因は大きく消化器疾患、泌尿器科疾患、婦人科疾患、その他に分けられます。
消化器疾患
泌尿器疾患
婦人科疾患
その他
- 動脈解離
- 動脈瘤破裂
上記以外にも、下腹部痛の原因となる病気はあります。
受診の目安・何科を受診するべきか
下腹部の痛みが続く場合、病院に行くべきですか?
下腹部の痛みが続く場合は、病院に行くことをおすすめします。
下腹部の痛みが続く場合には、医療機関の受診をおすすめします。
下腹部の痛みの原因は多岐にわたります。具体的には、
などがあります。
腸炎や便秘など一時的なものであれば、しばらく安静にしていれば治る可能性が高いです。しかし、なんらかの病気が原因となって痛みが生じている場合には、原因を取り除かない限り痛みは治りません。
特に症状が持続する場合や、他の症状(発熱、嘔吐や下痢などの消化器症状、皮疹など)を伴っている場合には、なんらかの病気が原因となっている可能性が高いため、注意が必要です。
なかには手術が必要な病気や命に関わる病気もあるため、痛みが続く場合には、一度医療機関を受診したほうが良いと考えられます。
下腹部の痛みがある場合、受診の目安はありますか?
痛みが激しい、痛みが続く、血便・不正出血などの症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
以下のような症状がある時は危険な病気の可能性があるため、早急な受診・救急要請をおすすめします。
- 突然、激しい痛みが起きた
- 痛みが徐々に悪化して耐えられない痛みになった
上記以外の場合でも、以下のような場合は受診を検討しましょう。
下腹部の痛みがある場合、何科を受診したらよいですか?
内科や消化器科を受診しましょう。生理不順や不正出血などを伴う場合は、産婦人科の受診もおすすめします。突然の激しい痛みがある場合は危険な病気の可能性があるので、救急外来を受診しましょう。
下腹部痛は消化器の病気の可能性が高いため、内科あるいは消化器科で対応します。
しかし、生理不順や不正出血などが伴う場合は婦人科系の病気、排尿時痛や血尿などが伴う場合は泌尿器の病気も考えられるため、それぞれの診療科を受診してください。
また、突然の激しい下腹部痛が出現した場合は、動脈解離や卵巣茎捻転・精巣捻転など緊急を要する病気の可能性があるため、救急外来の受診をおすすめします。
対処法・セルフケア
下腹部の痛みに対して自分でできる、即効性のある対処法はありますか?
即効性のある対処法はありません。痛みが続く場合には医療機関を受診しましょう。
痛みの原因により治療は異なるため、確実に即効性のある治療はありません。痛み止めや経過観察で改善する場合もありますが、痛みが続く場合には医療機関を受診しましょう。
下腹部の痛みの原因は多岐にわたります。
などがあります。
腸炎や便秘など一時的なものであれば、しばらく安静にしていれば治る可能性もあります。しかし、なんらかの病気が原因となって痛みが生じている場合には、原因を取り除かない限り痛みは治りません。
治療を行うためには、まず診断をつける必要があるため、気になる場合には医療機関を受診しましょう。
特に症状が持続する場合や、他の症状(発熱、嘔吐や下痢などの消化器症状など)を伴っている場合には、なんらかの病気が原因となっている可能性が高いため、注意が必要です。
下腹部の痛みの薬
感染性胃腸炎による下腹部の痛みに効く薬はありますか?
胃腸にやさしい痛み止めや、腸の動きを和らげる薬を使用することがあります。
ロキソプロフェン(ロキソニン®︎)やその類似の薬は胃腸の粘膜を傷つけてしまうことがあるので使用しませんが、比較的胃腸にやさしい鎮痛薬であるアセトアミノフェン(カロナール®︎)は使用する場合があります。
腸の過剰な動きが原因で痛みが起きている場合は、ブチルスコポラミン(ブスコパン®︎)を使用することがあります。
整腸剤は、腸内細菌を回復させるために使用することで胃腸炎の治癒を促し、症状の改善を助けます。
生理痛による下腹部の痛みに効く薬はありますか?
イブプロフェン(ブルフェン®︎)やロキソプロフェン(ロキソニン®︎)のような鎮痛薬が有効です。
生理痛に対してはイブプロフェン(ブルフェン®︎)、ロキソプロフェン(ロキソニン®︎)などの鎮痛薬が有効です。鎮痛薬が無効な場合は、ホルモン療法を行うことがあります。
つらい生理痛が続く場合は、婦人科を受診しましょう。
便秘による下腹部の痛みや張りに効く薬はありますか?
市販の下剤や整腸剤が効く可能性があります。ただし、がんや神経の病気など、他の病気が便秘を引き起こしている可能性もありますので、症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。
便秘薬は下剤や腸の動きを促す薬、整腸剤などさまざまです。便秘の背景に他の病気が隠れていて、その影響で便秘になっている可能性もあるので、症状が続く場合は一度医療機関の受診をおすすめします。
市販の便秘薬も有効なことがありますが、どの便秘薬が効果的かは状態によって変わってくるので医師と相談しましょう。
下腹部の痛みに効果のある薬はありますか?
一般的な鎮痛薬が効果的な場合もありますが、基本的には原因となる病気の治療により下腹部の痛みも和らいでいきます。医療機関を受診して、適切な治療を受けることが必要です。
市販の痛み止めを内服することで下腹部痛は軽減する可能性があります。
しかし、痛み止めは根本的治療ではありませんので、薬で痛みを抑えているうちに病状が悪化してしまうリスクがあります。
「下腹部の痛みがある場合、受診の目安はありますか?」に記載の症状に当てはまる場合には、医療機関を受診しましょう。
参考文献
Streitberger K et al. Drug therapy of acute and chronic abdominal pain. Ther Umsch. 2011, 68, p.435-440.
Tytgat GN. Hyoscine butylbromide: a review of its use in the treatment of abdominal cramping and pain. Drugs. 2007, 67, p.1343-1357.
Wie C et al. Interventional Treatment Modalities for Chronic Abdominal and Pelvic Visceral Pai. Curr Pain Headache Rep. 202226p.693-691.
下腹部の痛みに関連するその他の質問
下腹部の痛みがある場合、日常生活でできる対策はありますか?
暴飲暴食を避け、バランスのよい食事と適度な運動を心がけましょう。
お酒や脂っこいものの摂り過ぎは胃腸の症状を悪化させます。便秘がちな人は、食物繊維が豊富な食品やヨーグルトなどの乳酸菌食品を摂りましょう。
適度な運動やお腹のマッサージも有効です。
「便秘の場合、日常生活で気を付けることはありますか?」も合わせて参照ください。
下腹部の痛みについて、医師にどのように説明したらよいですか?
いつから、どの部位が、どのように痛むのか、具体的に説明しましょう。
以下のような点を説明できると病気の診断の手がかりになります。
出現時期
いつ症状が始まったか(昨日から、1週間前から、数時間前からなど)
場所
どこが痛いか(全体的に、下腹部の真ん中だけ、右下の方など)
性状
どのような痛みか(差し込むような、重い、ズキズキする、じんわりなど)
強さ
どれくらいの痛みか(眠れないくらい、うずくまるほど、作業はできるが気になるなど)
変化
どのような時に良くなるか、あるいは悪くなるか(食後に悪くなる、排尿時に痛い、排便すると良くなるなど)
他の症状
経過
どんどん悪くなっているか、あるいは良くなっているか、変わらないか
下腹部の痛みについて、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「お腹の下の方の痛みがある」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 吐き気や嘔吐がありますか?
- 便がゆるいか、あるいは下痢をしていますか?
- ここ1週間以内に生牡蠣、刺身、古いおにぎり・弁当、加熱不十分なレバー、生水などの食中毒を起こしそうなものを口にしましたか?
- 体温は37.5℃以上ですか?
下腹部の痛みに関連する病気・症状
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この記事の監修医師
吉岡 藍子
消化器内科・内科
消化器内科医の吉岡藍子と申します。 これまで大学病院や市中病院、健診センターでの内視鏡業務などを通して、消化器領域を幅広く経験してまいりました。 診療の現場では、専門的な用語や複雑な病状の説明に、患者様が戸惑いや不安を感じる場面に何度も出会いました。医療機関で提供される膨大な情報を前に、混乱されてしまう方も少なくありません。そこで、ご自身の病気や体、そして健康について、一人でも多くの方が正しく理解できる環境を作りたいという想いから、ユビーの活動に参加させていただいております。皆様が正しい医学知識に普段から触れ、安心してご自身の健康と向き合えるよう、分かりやすい情報提供に努めてまいります。 【経歴】 新潟大学医学部卒。 新潟県内外の市中病院、大学病院で勤務。 新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野にて博士取得。 2022年からユビーに入社し、横浜市で健診内視鏡診療を兼務。
- 更新日
- 2026/07/09
- 公開日
- 2021/01/18