ホモシスチン尿症で水晶体に異常は出ますか?

ホモシスチン尿症では水晶体脱臼という異常が高頻度に起こり、診断の手がかりのひとつになります。

はい、ホモシスチン尿症では、水晶体脱臼(目の中のレンズがずれる)がよく起こります。

ホモシスチン尿症では、ホモシステインという物質が過剰にたまることで、体中の結合組織(組織を支える線維のような構造)がもろくなります。目の中にある水晶体(ピントを合わせるための透明なレンズ)は、細い線維によって支えられていますが、ホモシステインが高い状態が続くと、この線維が弱くなり、水晶体が正しい位置からずれる「水晶体脱臼」が起こります。

水晶体脱臼は、ホモシスチン尿症の約70%から90%の患者さんで生じると報告されており、診断のきっかけとなる重要なサインです。特徴は以下の通りです。

  • 発症時期:多くは6〜10歳頃に視力の低下や強い近視として気づかれます。
  • 脱臼の方向:多くは下方(下の方)にずれます。
    • ※同じように水晶体脱臼を起こすマルファン症候群では上方脱臼が多い点が異なります。
  • 症状:視力低下、かすみ、複視(二重に見える)、まぶしさ、視野異常など。強度近視乱視緑内障、網膜剥離などを引き起こすこともあります。
  • 治療:眼鏡やコンタクトレンズでの矯正が可能な場合もありますが、脱臼が進行したり視力障害が強い場合は、水晶体摘出手術が行われます。全身麻酔時には血栓リスクが高まるため、麻酔科・代謝科・眼科の連携が重要です。

水晶体脱臼は、ホモシスチン尿症の早期発見の手がかりにもなります。小児期に視力低下や近視の急な進行があれば、眼科と小児科の両方で評価を受けることが望まれます。

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宮城県立こども病院 小児科

谷河 翠 監修

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