長鎖脂肪酸代謝異常症を放置するとどうなりますか？

長鎖脂肪酸代謝異常症を診断されずに放置したり、診断されていても適切な治療管理を行わなかったりすると、命に関わる非常に深刻な事態を引き起こす可能性があります。

この病気の根本的な問題は、空腹時や運動時など、体にエネルギーが必要となった時に、蓄えている脂肪をエネルギー源として利用できないことです。そのため、放置すると以下のようなことが起こります。

重篤な低血糖発作

体内の糖分が尽きると、脳をはじめとする重要な臓器がエネルギー不足に陥り、意識障害、けいれん、昏睡といった症状を引き起こします。これが直接の死因となることもあります。

心機能の悪化（心不全）

常に動き続けている心臓の筋肉（心筋）も深刻なエネルギー不足に陥ります。これにより、心臓のポンプ機能が著しく低下する「心筋症」が進行し、重い心不全や致死的な不整脈を引き起こす危険があります。

筋肉の破壊（横紋筋融解症）

骨格筋もエネルギー不足でダメージを受け、筋肉細胞が次々と壊れていきます。その結果、筋力低下や激しい痛みが起こるだけでなく、筋肉の成分が腎臓に詰まり、急性腎障害を引き起こすこともあります。

突然死

特に乳幼児期において、風邪などの感染症や長時間の空腹が引き金となり、急激な代謝の破綻（代謝クライシス）が起こり、突然死に至ることがあります。

現在では新生児マススクリーニング検査によって早期発見が可能となり、適切な食事療法などを行うことで、これらの深刻な事態は予防できるようになっています。