抗利尿ホルモン不適合分泌症候群（SIADH）とナトリウムの関係を教えてください。

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群（SIADH）とナトリウムは、「水と塩（ナトリウム）のバランス」という点で非常に密接な関係にあります。結論から言うと、SIADHは低ナトリウム血症を引き起こします。そのメカニズムは以下の通りです。

抗利尿ホルモン（ADH）の過剰分泌

SIADHでは、体内に水分が十分にあるにもかかわらず、抗利尿ホルモン（ADH）が必要以上に分泌され続けます。ADHは、腎臓に対して「尿を減らして、水分を体内に再吸収せよ」という命令を出すホルモンです。

体内の水分過剰

過剰なADHの命令により、腎臓は本来なら尿として捨てるはずの水分まで体に溜め込んでしまいます。これにより、体全体の水分量が増加します。

血液が薄まる（希釈性低ナトリウム血症）

体内のナトリウムの総量は変わらないのに、水分だけが増えるため、結果として血液が水で薄まったような状態になります。コップに入った塩水の塩分量はそのままで、水をたくさん注ぎ足すと塩味が薄くなるのと同じ原理です。これにより、血液中のナトリウム濃度が正常値（約135 mEq/L）より低い「低ナトリウム血症」という状態が引き起こされます。

SIADHの症状（吐き気、頭痛、けいれん、意識障害など）は、すべてこの低ナトリウム血症によって引き起こされるものです。したがって、SIADHの治療は、いかにしてこの水とナトリウムのアンバランスを是正するかに焦点が当てられます。