筋ジストロフィーは先天性の病気?筋ジストロフィー
監修医師原瀬 翔平亀田総合病院 脳神経内科
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03
筋ジストロフィーとは
骨格筋肉の破壊と再生を繰り返す遺伝性の病気です。筋肉が壊れても再生が追いつかず、筋力低下が起こり運動障害をもたらします。
肢帯型筋ジストロフィーとは何ですか?
体の中心に近い、肩や腰の筋肉から筋力低下が始まる筋ジストロフィーの一種です。
肢帯型筋ジストロフィーは、主に肩の周り(上肢帯)や腰の周り(腰帯)の筋肉から筋力低下が始まることの多い筋ジストロフィーの一種です。
肢帯型とはひとつの病気を指すわけではなく、いくつかの病気がこの中に含まれている疾患群であると考えられています。
多様な遺伝子の異常によって起こり、現在では多数の病型が含まれることが分かっています。そのため、2017年には国際的な分類の見直しも行われました。
この病気は症状が比較的ゆっくりと進行します。多くの患者さんで「立ち上がったり、階段を上ったりするのが大変」といった症状で気づかれます。
病型によっては、症状が出始める年齢に違いがみられます。また、腕や足の遠い部分(末端)の筋肉に症状が目立つというように、病型によっては、症状自体が異なることもあります。
病型によっては、心臓の機能や呼吸機能に影響が生じやすく、命に関わる場合があります。このため、心臓や呼吸機能について定期的な評価が大切です。
筋強直性ジストロフィーとは何ですか?
筋肉が一度収縮した後に緩みにくくなる「ミオトニー現象」がみられることが特徴的な病気です。
筋強直性ジストロフィーとは、成人で最も患者さんの多い筋ジストロフィーの一種です。
この病気は、筋肉が一度収縮した後にスムーズに緩みにくくなる「ミオトニー現象」がみられることが特徴的な病気です。
ほかには、筋力の低下、筋肉のやせ(筋萎縮)が主な症状として現れます。
遺伝子の異常によって、大きく「1型(DM1)」と「2型(DM2)」の二つの病型に分かれます。
日本では、ほとんどの患者さんに見られるのはDM1です。DM1では、全身の様々な臓器に次のような影響が出る特徴があります。
DM2は日本国内では非常に稀です。DM1に比べ症状が軽症な傾向があり、主に体の中心に近い筋肉の筋力低下や筋肉痛で見つかることが多いとされています。
「筋ジストロフィー」とはどのような病気ですか?
遺伝子の異常により筋肉の機能が障害され、筋肉が壊れやすくなる病気です。月日とともに徐々に症状が悪化します。指定難病のうちのひとつです。
筋ジストロフィーは指定難病のうちのひとつで、体を動かすことに関わる筋肉が壊死(えし:生体内の細胞や組織が死んでしまうこと)していく病気です。
この病気の主な原因は、遺伝子の異常です。遺伝子の異常により筋肉の正常な機能が障害され、筋肉の細胞が死んでしまいます。このため筋肉が萎縮し、筋力低下が見られ、徐々に悪化していきます。
症状について
運動機能のほかに障害が見られる可能性がある機能には、呼吸や飲み込み、心臓、消化、視力、聴力などがあります。一部の病気では知的障害やけいれん、白内障などの症状が見られることがあるなど、病気の種類によって症状が異なります。
検査・診断について
筋ジストロフィーは遺伝子の異常によって起こるため遺伝する病気ですが、種類によって遺伝のしやすさが異なります。症状だけでは病気の種類を確定できないことも多く、診断には遺伝子診断や筋肉の細胞検査(=筋生検(患部の一部を切り取って観察する組織検査))が必要です。
また、筋ジストロフィーは少しずつ進行します。病気の種類によって出やすい症状は決まっているものの、どのような順番になるかは人によって異なります。このため、現在の体の能力や病気の状況を定期的に検査し、起こり始める問題を早めに発見し、早期から対応していくことが大切です。
筋ジストロフィーの症状
筋ジストロフィーには初期症状はありますか?
初期症状には、筋力不足による運動機能の障害があります。知的障害や心臓の病気などが見られることもあります。
病気の種類によっても個人によっても、発症する年齢や重症度に幅があります。命に関わるような症状が早い段階から見られる場合もあれば、症状が軽度なため、なかなか診断がつかない場合もあります。
この病気の代表的な症状は筋力不足であり、運動能力の不足が起こりやすいです。そのため、年代によって見られる可能性のある初期症状は以下のとおりです。
乳児期
- 首のすわりや座位の遅れ
- はいはいが出来ない、遅れる
- 口が開きっぱなしになりやすい
- 舌が大きい
幼児期
- 一人歩きの遅れや、不安定な歩行
- 転びやすい
- 走ることが出来ない
- 階段上り下りが苦手
- 知的障害
- 近視や遠視、斜視などの眼の病気
青年期以降
筋ジストロフィーの末期症状はどのようなものがありますか?
末期症状には、重度の筋力低下に加え、呼吸不全、心不全、嚥下障害などの合併症があります。
筋ジストロフィーの末期症状には、重度の筋力低下に加え、呼吸不全、心不全、嚥下障害などの合併症があります。
筋ジストロフィーが進行し、末期になると、全身の筋力低下が著しくなり、自力での姿勢維持や移動が非常に困難になります。
これに伴い、関節が硬くなる「拘縮」や体の変形(特に背骨の曲がりなど)が見られるようになります。
また、命に関わる重要な症状として、次のような合併症が挙げられます。
呼吸不全
肺の機能が低下し、呼吸が苦しくなります。呼吸機能障害は、一般的に運動機能障害が進行した後に現れることが多いですが、病型によっては早期から現れることもあります。窒息や誤嚥(誤って食べ物や唾液が気管に入ること)による肺炎(誤嚥性肺炎)のリスクが高まります。
心不全や不整脈
心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送れなくなります。不整脈も重要な合併症であり、筋強直性ジストロフィーやエメリー・ドレフュス型では高頻度に見られ、突然死の原因となることもあります。
嚥下障害
食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる症状です。多くの病型では病気の進行した段階で現れますが、筋強直性ジストロフィーでは病気の初期から見られることもあるため、注意が必要です。嚥下障害があると、栄養不足になったり、誤嚥性肺炎のリスクがさらに高まったりします。
これらの症状は、病型によって特徴があるものの、必ずしも決まった順序で生じるわけではありません。
定期的な評価のもと、必要なときに適切なケアを受けられるようにしましょう。
筋ジストロフィーではどのような症状がありますか?
手足の筋力が落ちたり、呼吸や飲み込み、消化、心臓の機能が落ちたりします。
この病気は、遺伝子の異常により全身の筋肉の筋力が低下していく病気です。筋ジストロフィーには多くの種類が認められており、病気の種類によって筋力が低下する部位が異なり、みられやすい症状が変わります。
以下がその代表的な症状です。
腕や脚、体幹の筋力低下
「歩く」「走る」「座る」「物をもつ」など、さまざまな運動機能の障害につながります。
この病気の代表的な症状ですが、機能障害がほとんど起こっていない場合では病気に気が付かないこともあります。
悪化してくると関節の動く範囲が狭くなる拘縮や、運動不足による骨粗鬆症につながります。
呼吸や飲み込みの筋力低下
呼吸や咀嚼(そしゃく)、飲み込みにも筋力が必要です。この機能の低下により、息苦しさや肺炎、歯並びの悪さや栄養不足などにつながります。
目のまわりの筋力低下
まぶたが下がってくる(=眼瞼下垂)、眼球の運動障害や表情の乏しさにつながります。悪化すると白内障や網膜の病気を起こす場合もあります。
心臓の機能低下
心臓は筋肉のかたまりです。心不全や不整脈をおこす場合もあります。
胃腸の機能低下
胃腸も筋肉によって動いています。胃の拡張や便秘、腸閉塞をおこす場合があります。
その他
病気によっては筋肉と関係の無い症状が見られることもあります。禿げ、認知症、知的障害、甲状腺機能障害、脂肪肝、胆石、難聴、中耳炎、悪性腫瘍などさまざまな合併症の報告があります。
筋ジストロフィーのミオパチー顔貌の特徴を教えてください。
表情が乏しくなる、口が開きがちになる、顔が細長くなるといった顔つきです。
ミオパチー顔貌とは、筋ジストロフィーの方に特徴的な顔つきを指します。これは、顔のまわりの筋力低下が原因で起こります。
筋ジストロフィーは筋肉の機能に関わるタンパク質に異常が起こることで、様々な筋肉の機能が低下する病気です。
顔は様々な種類の筋肉がうまく機能することによって表情や顔つきがつくられます。
このため、顔の筋肉の機能が低下することによって、表情が乏しくなる、口が開きがちになる、口腔内の変形といった顔つきの変化につながります。
ほかには、瞼が下がりやすくなる、顔面が細長くなるといった見た目の変化がみられる場合もあります。
代表的な病気は先天性ミオパチーですが、ほかの筋ジストロフィーの方でも特徴的な顔つきが見られる場合があります。
筋ジストロフィーにはどのような種類がありますか?
代表的なものに、ジストロフィノパチーや肢体型、先天性、筋硬直性などがあります。
筋ジストロフィーにはいくつかの種類があり、それぞれの種類に特徴があります。
以下に代表的な筋ジストロフィーの種類とその特徴をまとめます。
ジストロフィノパチー
デュシェンヌ型やベッカー型、女性型などがあります。主に、腕の付け根や足のつけ根などの体の中心に近い部分にある筋肉(近位筋とよびます)の筋力が低下します。デュシェンヌ型の方の約4割は、遺伝とは関係なく突然変異で生じることが報告されています。
肢帯型 (Limb-girdle muscular dystrophy, LGMD)
主に近位筋の筋力が低下します。足の筋力不足のため、1歳以降にならないと歩けないことが多いです。症状の種類が多様で、同じ病気でも症状が似ていない場合があります。
先天性 (Congenital muscular dystrophy, CMD)
主に近位筋の筋力が低下します。1歳未満で症状がはっきりすることも多く、症状が強いことから歩けるようにならない場合も多いです。特に福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)は、日本の先天性の中で最も多い種類ですが、日本と韓国・中国以外ではほとんど見られません。
顔面肩甲上腕型
肩甲骨まわりや上腕、顔面の筋力が主に低下します。
筋強直性 (Myotonic dystrophy, DM)
筋強直現象(筋肉に力が入ったまま、なかなか緩まない現象)が見られ、体から離れた遠位筋や、咀嚼に用いる筋肉に主に障害が見られます。内臓を含め、全身に多彩な合併症を伴うことが特徴で、運動の障害よりも先に内臓の合併症が出現することも少なくありません。
筋ジストロフィーは女性でもなりますか?発症する場合、どのような症状がありますか?
女性も筋ジストロフィーになりますし、通常は症状に男女差はありません。デュシェンヌ型のように、女性がなりにくい種類もあります。
筋ジストロフィーにはさまざまな種類がありますが、男女で頻度がほとんど変わらないものが多いです。
筋ジストロフィーは、遺伝子の異常によって正常な筋肉が作られなくなり筋力低下を生じる病気の集まりです。病気の原因となる遺伝子の異常の種類は、数多く報告されています。
なお筋ジストロフィーのなかで最も頻度が高いのは、デュシェンヌ型と呼ばれるものです。この病気はX染色体という男女を分ける遺伝子に異常があるため、ほとんどの場合で男性に見られる病気です。しかし、女性でもまれに、デュシェンヌ型と同じような症状が子どものころから見られる「女性ジストロフィノパチー」という病気があります。この病気も指定難病の対象になっています。
症状は病気の種類によっても個人によっても幅があります。女性も筋力低下や運動機能の低下、心機能や呼吸機能の低下といった症状が見られることが一般的です。「女性ジストロフィノパチー」では軽症ですむ方もみられ、高齢になった際に心機能低下にとともに病気を発症することもあります。
筋ジストロフィーの原因
筋ジストロフィーの原因は何がありますか?
遺伝子の異常により筋肉の正常な機能が障害され、筋肉の細胞が死んでしまうことが原因です。
原因は、遺伝子の異常です。遺伝子の異常により筋肉の正常な機能が障害され、筋肉の細胞が死んでしまいます。このため筋肉が萎縮し、筋力の低下が主な症状としてみられます。
どのような機能をもつ遺伝子に異常が生じるかは病気の種類によって異なります。細胞の膜に関係するもの、筋肉の細胞に関係するもの、タンパク質の生成に関係するものなどさまざまです。これらはさまざまな形で筋肉の細胞の壊死(えし:生体内の細胞や組織が死んでしまうこと)や機能障害へとつながり、結果的にこの病気で見られる症状が似通ったものとなります。
どのような遺伝子に異常がおこり、その結果から細胞のどのような機能が障害されているのかがさらに究明されることで、新しい治療法の開発につながることが期待されています。
遺伝子の異常の発生原因
遺伝子に異常をきたすことが原因であるため、この病気は親から遺伝している場合があります。遺伝のしやすさは病気の種類によって異なります。一方、それ以外の原因として遺伝子の突然変異があります。遺伝子の突然変異の原因はさまざまです。例えば細胞が分裂する際に遺伝子の複製にミスが生じる場合や、薬などの化学物質や紫外線・放射線による遺伝子の破壊、ウイルス感染などがあります。
筋ジストロフィーの検査・診断
筋ジストロフィーのセルフチェックはできますか?
解説欄のチェック項目をご確認いただくか、症状検索エンジン「ユビー」で質問に答えるだけでセルフチェックもできます。
筋ジストロフィーは、病気の種類によっても個人によっても発症する年齢や症状の重症度に幅がある病気です。また、さまざまな合併症をおこしやすいという特徴があります。
以下のチェック項目を参考にして、疑わしい場合には小児科または神経内科を受診しましょう。
遺伝
- 家族が筋ジストロフィーと診断されている
乳児期
- 泣き声がとても小さい
- 乳やミルクの吸いが弱く、体重が増えない
- 筋肉に力が入っていないため、両手をもって引き起こしたり、うつぶせの状態で持ち上げたりすると頭が垂れ下がってしまう。
- 仰向けで寝かせると、「カエルの足」のように足がべったり床につく
- 首のすわりや座位の遅れ
- はいはいが出来ない、遅れる
- 口が開きっぱなしになりやすい
- 舌が大きい
幼児期
- 一人歩きの遅れや、不安定な歩行
- 転びやすい
- 知的障害がある
- けいれんを起こす
- 階段上り下りが苦手
- 膝や足の関節が固く、動かすことができない
- 背骨や胸周りの骨の変形
- 近視や遠視、斜視などの眼の病気
青年期以降
筋ジストロフィーの診断基準はどのようなものですか?
この病気の特長的な症状と、遺伝子検査や筋肉の顕微鏡検査などを含む各種検査によって総合的に診断します。
この病気の診断は、各種検査結果を総合的に判断して行われます。
特徴的な症状や合併症の有無の確認
まず、筋ジストロフィーに特徴的な症状や合併症の有無を確認します。
特徴的な症状とは、時間をかけて悪化し続ける身体の筋力低下です。ただし、この病気を幼少期に発症した方では、少しずつ筋力がついてきて出来ることが増えているように見えることがあります。この場合でも、通常の成長過程と比較すると、明らかに筋力が弱いことがこの病気の特徴です。
上述のような筋力低下に加え、さまざまな合併症があります。この病気にはさまざまな種類があるため、その種類によって見られやすい合併症が異なります。
例えば、
などがよく見られます。
家族情報の確認
もし、親類が遺伝子検査や筋肉の顕微鏡検査でこの病気の診断をうけている場合、その病気の種類と遺伝のしやすさが分かります。判明している通りに遺伝しているのであれば、この病気である可能性が高くなるため、この病気の家族情報も診断基準となります。
遺伝子検査
筋ジストロフィーが強く疑われた場合には、さらに遺伝子検査を行って筋ジストロフィーの遺伝子変異がないかどうか、遺伝子異常によって原因となる異常なタンパクが作られていないかどうかなどを確認します。
そのほかの検査
また、筋肉を採取して顕微鏡で検査をすることで、筋肉にこの病気に特徴的な異常な所見が無いかも確認します。血液検査や筋電図の検査も参考とします。
他に似た症状が見られる病気である可能性を否定したうえで、該当する検査結果の種類が何で、いくつあるかによって
- 「Definite(確実)」
- 「Probable(ほぼ確実)」
- 「Possible(可能性あり)」
と診断します。
筋ジストロフィーの治療・対処法
筋ジストロフィーへの対処法は?
根本的な治療はまだありませんが、新薬が開発されつつあります。体の変形が強い場合は手術をしたり、呼吸筋が弱った時は酸素の補充や人工呼吸器をつける場合もあります。
筋ジストロフィーの場合、主にどのような治療をしますか?
ステロイドなどお薬による治療や、ストレッチなどのリハビリを行います。
現時点では、筋ジストロフィーの根本的な治療方法はありません。この病気は、病気の種類によっても個人によっても発症時期や症状の重症度に幅があるため、患者さん個人の状況に合わせた対応を行うことが重要となります。
以下のような治療を、現在の状況に合わせ組み合わせて行います。
リハビリテーション
筋力が徐々に低下することが主要な症状です。肩、手首、膝などの関節は、筋肉で動かしていないとすぐに動きが固くなってしまいます(拘縮とよびます)。拘縮した関節は、変形もしやすくなります。
筋力の維持や関節の拘縮の予防にはストレッチやマッサージなどのリハビリが重要です。ただし、筋ジストロフィーの患者さんの筋肉は痛みやすいため、筋力トレーニングのやり方には専門的な知識が必要です。
また、呼吸機能や嚥下機能についてもリハビリを行うことで機能を維持しやすくなる場合があります。
手術
筋力の低下に伴って背骨や胸周りの骨に変形がすすむことがあります。座る姿勢が維持しにくい、呼吸や食事がしづらいなどの不自由について手術で改善される場合があります。一般的に大規模の手術になりやすいため、内臓の機能が落ちていない段階で行うことが重要になります。
心臓の治療
心臓の機能がおちてくれば心保護剤の使用や、不整脈については薬やペースメーカー、心臓カテーテル(体内に挿入して使う、検査や治療などを行うための細い管)による治療を行う場合があります。
人工呼吸器
呼吸機能が落ちてくると、人工呼吸器の装着が必要になる場合があります。チューブを挿入する必要のない、マスクを用いた人工呼吸を行う場合が多いです。自宅で行うことができます。
デュシェンヌ型での薬剤治療
日本では最も頻度の高いデュシェンヌ型では、ステロイドという薬が筋力低下の進行を遅らせる効果があると認められています。歩行が可能な時期を伸ばすこと、呼吸機能の低下の予防に一定の効果があります。
2020年からは新薬が保険適用となっています。エクソンスキッピング療法という治療法で、体内でジストロフィンというタンパク質が作られるようにします。運動機能の低下を抑えて症状の進行を遅らせると期待されています。
ただし、効果のある遺伝子が決まっており、デュシェンヌ型のなかでも1割程度の方に効果が期待できる治療法です。詳細は専門の医師に相談しましょう。
受診の目安・何科を受診するべきか
筋ジストロフィーが疑われる場合、何科を受診したらよいですか?また、病院を受診する目安はありますか?
子どもの運動機能の発育が遅い場合には、この病気の可能性があるため小児科を受診しましょう。大人になってから、立ち上がる・階段の上り下りが大変に感じるなどの運動機能の低下がみられたら神経内科を受診しましょう。
筋ジストロフィーは、病気の種類によっても個人によっても発症する年齢や重症度に幅があります。命に関わるような症状が早い段階から見られる場合もあれば、症状が軽度のため、なかなか診断がつかない場合もあります。
この病気が疑われる症状が現れ始めた年齢によって、受診するべき科が異なります。
新生児〜幼児の場合
新生児から幼児で、なかなか首がすわらない、歩くようにならないなどの運動機能の発育が遅い場合などでは小児科を受診しましょう。
大人の場合
大人になってから段々と筋力の低下が目立つようになり、この病気が疑われる場合もあります。椅子から立ち上がる、階段の上り下り、重いものを持ち上げるといった動作が大変に感じるようになってきたら病院の受診を検討する必要があります。この場合には神経内科を受診しましょう。
また、この病気はさまざまな合併症をきたす場合があり、心臓や呼吸機能に異常があれば内科を、脊椎や関節の運動に異常があれば整形外科を受診する必要がでてくる場合があります。
筋ジストロフィーを放置するとどうなりますか?
この病気を放置すると、筋力低下や身体機能の障害が進行し、様々な合併症のリスクが高まります。
筋ジストロフィーには、現時点では根本的な治療薬はありません。
しかし、病気の進行を遅らせる、症状を和らげる、合併症を防ぐための専門的な治療やケアが非常に重要です。
もし、適切な治療やケアを放置してしまうと、次のようなことが起こるリスクが高まります。
筋力低下の進行
筋肉の機能がさらに低下し、立つ、歩く、腕を上げるなどの日常生活動作が困難になり、最終的には車椅子が必要になったり、寝たきりになったりする可能性があります。
身体の変形や拘縮
筋力低下により関節を動かさなくなることで、関節が硬くなる「拘縮」や、背骨の曲がりなどの体の変形が進んでしまいます。
呼吸機能の悪化
呼吸を支える筋肉が弱くなることで、呼吸不全が悪化し、肺炎などの感染症をおこしやすくなります。命に関わる危険な状態になることもあります。
心機能の悪化
心臓の筋肉にも影響が出ている場合、心不全や不整脈などの心臓の病気が進行し、突然死のリスクも高まります。
栄養状態の悪化
食べ物が飲み込みにくくなる嚥下障害が進行すると、十分な栄養が摂れなくなり、体重減少や体力低下につながります。
これらの合併症は、進行が緩やかな場合でも、症状がないからと過信せず、早期に発見し対処することが非常に重要です。
そのため、定期的に専門医療機関を受診し、適切な治療やケアを継続するようにしましょう。
筋ジストロフィーの名医の探し方を教えてください。
筋ジストロフィーの専門医は、日本筋ジストロフィー協会やMDCSTのウェブサイトで探すことができます。
筋ジストロフィーは、その症状やケアが多岐にわたるため、病気に詳しい専門医を見つけることが非常に重要です。次のような方法を試してみましょう。
患者団体・関連ウェブサイトの活用
一般社団法人日本筋ジストロフィー協会(JMDA)のウェブサイトでは、「筋ジストロフィーの専門病院」が紹介されています。また、MD Clinical Stationや難病情報センターのウェブサイトも情報源として役立ちます。
専門医を探す際のポイント
- 診療科:成人では「神経内科」、お子さんの場合は「小児科」が担当します。また、リハビリテーションや整形外科、呼吸器内科、循環器内科など、様々な診療科との連携が重要になります。
- 遺伝カウンセリング:遺伝に関する相談を希望される場合は、遺伝カウンセリング外来を設置している医療機関かどうかも確認するとよいでしょう。
これらの方法を活用し、継続的に相談・治療を受けられる専門医を見つけることが、病気と向き合っていくうえで重要です。
Ubieでは、「かんたん医師相談」から気軽に医師に相談することも可能です。
筋ジストロフィーの専門医がいる近くの病院はありますか?
筋ジストロフィーの専門医がいる病院を見る筋ジストロフィーに関連するその他の質問
筋ジストロフィーは遺伝しますか?
遺伝しますが、親が病気でなくても発症することもあります。
筋ジストロフィーは、遺伝子の異常によって筋力低下を起こす病気の集まりであり、遺伝する病気です。遺伝子の異常の種類は数多く報告されています。そして、症状の遺伝の仕方は病気によっていくつかのパターンが知られています。
例えば、筋ジストロフィーのなかでも頻度が一番高いのはデュシェンヌ型です。この病気は6割程度が両親からの遺伝とされ、残りの4割は本人の遺伝子が突然変異したものと考えられています。
筋ジストロフィーは個人によって見られる症状に幅がある病気です。同じ遺伝子異常を持つ家族どうしでも、発症する年齢や初期症状、その後の経過に大きな違いが見られることが少なくありません。
病気によっては、遺伝子異常があっても全く症状がみられず過ごす方もいます。このため、病気がみられていない健康な方でも、筋ジストロフィーに関係する異常遺伝子を持っている場合があります。
筋ジストロフィーでは車椅子が必要になりますか?
筋ジストロフィーの方の多くは、病気が進行するとともに車いすが必要となる場合があります。
筋ジストロフィーの方の多くは、病気の進行に伴い、車いすが必要となる場合があります。
筋ジストロフィーは筋肉の機能に関わるタンパク質に異常が起こることで、様々な筋肉の機能が低下する病気です。
たとえば、代表的な筋ジストロフィーの種類のひとつであるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合、思春期~成年期には脚の筋力低下によって歩行が難しくなる方が多いです。
徐々に体幹や腕の筋力も低下してくる場合が多く、通常の車いすの扱いも難しくなり、電動車いすが必要となる場合もあります。
筋ジストロフィーは、病気や個人によって筋力低下の進み方や程度が異なります。
デュシェンヌ型以外にも早い時期から車いすが必要となる病気もありますし、杖をほとんど必要としない程度の歩行障害で済む方もいます。
ご自身の状況については、担当医の話をよく聞くようにし、適切な時期に車いすを含めた歩行補助具の導入を検討するようにしましょう。
筋ジストロフィーとウルリッヒ病の関係性を教えてください。
先天性筋ジストロフィーの一種であり、現在では筋ジストロフィーとして扱われる病気の一つです。
ウルリッヒ病は、正式には「ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー」と呼ばれる病気であり、先天性筋ジストロフィーの一つです。
日本では、福山型の次に頻度が高い先天性筋ジストロフィーです。
この病気の原因は、筋肉の周りにある「VI型コラーゲン」というコラーゲンタンパク質の異常によるものです。
このため、ウルリッヒ病では筋力低下に加えて、次のような関節と皮膚の症状を起こしやすいことが特徴的です。
関節の症状
指の関節などが柔らかく伸びすぎる(過伸展する)一方で、肘や首などの体の中心に近い関節は硬くて動かしにくくなる(拘縮)という特徴があります。斜頸(首が傾いた姿勢)や股関節脱臼(股関節の位置の異常)なども見られる場合があります。
皮膚の症状
傷の治りが遅く、盛り上がった傷跡(ケロイド)になりやすい傾向があります。
2017年の国際的な分類見直しで、ウルリッヒ病は筋ジストロフィーの一病型に含められるようになりました。
筋ジストロフィーは先天性の病気ですか?
先天性のものと後天性のものがあります。ただし、どちらも病気の原因は遺伝子の異常です。
筋ジストロフィーには先天性のものと後天性のものがあります。ただし、どちらも病気の原因は遺伝子の異常です。
筋ジストロフィーは、筋肉の機能に大きく関係するタンパク質に、遺伝子レベルでの異常が起こることが原因となる病気です。
遺伝子の異常が親から子に伝わった場合は、先天性の病気となります。代表例は、先天性筋ジストロフィーという病気で、日本では福山型が最も頻度が高いとされます。
特殊な例では、筋強直性筋ジストロフィーでは、親に比べて子の方で症状が重くなる現象がみられる場合もあります。
一方で、親からの遺伝子とは関係なく、子の遺伝子に突然変異が起こることで生じる病気もあります。
例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合、日本では約4割の方が突然変異によって生じていると報告されています。
このように、筋ジストロフィーの種類によっては先天性ではなく後天性である場合があります。
筋ジストロフィーは難病ですか?
筋ジストロフィーは指定難病のひとつです。医療費助成を受けられる場合があります。
はい、筋ジストロフィーは指定難病のひとつです。
指定難病とは、法律に基づき医療費助成の対象となる特定の病気を指します。
助成を受けるためには、指定難病と認められるために申請する必要があります。申請のためには、正確な診断を受けていることが重要です。
症状だけでは、この病気の正確な診断にはならないため、遺伝子や筋肉を用いた検査を行います。
遺伝子診断だけであれば血液検査で十分な場合もありますが、遺伝子診断ができないタイプの筋ジストロフィーもあります。
このため、症状や遺伝子診断で病気の正確な診断ができなかった場合には、身体の一部の筋肉を外科的に採取して(筋生検といいます)、これに対して検査を行います。
ただし、もし身体の状況から筋生検が困難な場合は、ご親戚の中に確定診断を受けている方がいれば、そのデータを利用できる場合もあります。この点については、担当医に詳しく相談してください。
このように診断方法にはいくつかの選択肢があるため、診断方法について担当医と十分に相談することが大切です。
筋ジストロフィーについて、医師からのよくある質問
医師からよくある質問はありますか?
「筋ジストロフィー」について医師からよくある質問の例として次のようなものがあります。
- 手足などに力の入らない部分はありますか?
- 最近、髪の毛が抜けてきたと感じますか?
- 自力で立ち上がるのは難しいですか?
- 筋肉が硬く、他人が肘や膝を曲げようとしても上手く曲げられないですか?
- これまでに【側弯症】と診断されたことはありますか?
筋ジストロフィーに関連する病気・症状
この記事の監修医師
原瀬 翔平
亀田総合病院 脳神経内科・内科
University of Washington (理学部、分子細胞生物学) 卒業後、アップルジャパン株式会社勤務を経て、琉球大学医学部に入学。沖縄県立中部病院での初期臨床研修(2016, 2017年度最優秀研修医賞受賞)修了後、2018年4月に亀田総合病院に入職。同院脳神経内科ベスト指導医(2019, 2020)を受賞。2018年から亀田総合病院卒後研修センター長補佐も兼任しており、臨床だけでなく研修病院における医学教育にも力を入れている。2021年には国立循環器病研究センター脳血管内科で超急性期脳卒中診療を行う。 総合内科の視野を持ちながらの脳神経内科領域、特に脳卒中を専門とする。急性期だけでなく予防、慢性期脳卒中による症候性てんかん、高次脳機能評価、リハビリ、等にも精通。頭痛、しびれ、物忘れ等の主訴にも柔軟に対応できる。 日本語、英語(ネイティブ)、中国語(日常会話)での対応も可能。
- 更新日
- 2026/10/27
- 公開日
- 2020/09/03