多発血管炎性肉芽腫症の治療ガイドラインについて教えてください。
国際的な治療ガイドラインでは、寛解導入療法と寛解維持療法の、大きく2つの段階に分けたアプローチが推奨されています。
多発血管炎性肉芽腫症とは
多発血管炎性肉芽腫症(GPA、旧称:ウェゲナー肉芽腫症)は、免疫の異常によって自分自身を攻撃してしまう自己抗体(ANCA)が作られ、全身の細い血管に炎症が起きる病気です。早期に正しく診断し、適切な治療を始めることで、以前に比べてその後の見通し(予後)が劇的に改善するようになりました。
多発血管炎性肉芽腫症の原因
なぜこのような自己抗体が作られ、免疫が暴走してしまうのか、根本的な原因はまだはっきりとはわかっていません。特定の遺伝子が直接親から子へ遺伝する病気ではないとされています。
多発血管炎性肉芽腫症の症状
発熱や強いだるさといった全身の症状に続いて、主に「鼻・耳・喉」から始まり、「肺」、そして「腎臓」の順に症状が広がっていくことが多いのが特徴です。
- 全身の症状: 38度以上の発熱、原因不明の体重減少、強いだるさなど
- 上気道(耳・鼻・喉)の症状: 治りにくい鼻づまり、膿や血の混じった鼻水、中耳炎など
- 肺の症状: 長引く咳、血の混じった痰、息苦しさなど
- 腎臓の症状: 健康診断などで見つかる血尿やたんぱく尿など
治療ガイドラインに基づく2段階の治療
現在の治療の基本方針は、免疫の働きを抑える薬を使った「2段階のアプローチ」で行われます。
寛解導入療法(激しい症状を抑え込む初期治療)
命や重要臓器に関わる強い炎症を速やかに鎮めるため、「副腎皮質ステロイド」に、強力な免疫抑制薬である「シクロホスファミド」や「リツキシマブ」などを組み合わせて使用します。腎臓の障害が非常に重い場合は、血液中の悪い成分を直接取り除く「血漿交換(けっしょうこうかん)」という治療を併用することもあります。
寛解維持療法(落ち着いた状態を保つ継続治療)
病気が落ち着いた(寛解した)あとは、ステロイドの量を徐々に減らしながら、副作用の少ない別の免疫抑制薬(「アザチオプリン」や「メトトレキサート」など)や「リツキシマブ」を長期間(通常12〜18ヶ月以上)継続して使用し、病気のぶり返しを防ぎます。
治療後の経過と受診の目安
多発血管炎性肉芽腫症は、症状がすっかり落ち着いたように見えても、時間が経ってから再び悪化することが珍しくありません。そのため、自己判断で薬をやめたり通院を中断したりせず、生涯にわたって定期的な診察と検査を受け続けることが非常に重要です。治療中に風邪のような症状が長引いたり、血痰や血尿など気になるサインが現れたりした場合は、早めに主治医にご相談ください。
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(参考文献)
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業. ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023. 診断と治療社. 2023
難病情報センター.“多発血管炎性肉芽腫症(指定難病44)”.厚生労働省.https://www.nanbyou.or.jp/entry/4011,(参照 2026-08-18).
川嶋聡子.“多発血管炎性肉芽腫症(GPA)”.日本リウマチ学会(JCR).https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/gpa/,(参照 2026-08-18).
Hellmich B, et al. EULAR recommendations for the management of ANCA-associated vasculitis: 2022 update. Ann Rheum Dis. 2024, 83, p.30-47.
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京都大学iPS細胞研究所 呼吸器内科
山形 昂 監修
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