多発血管炎性肉芽腫症とがんは関係がありますか?
病気そのものが直接がんを引き起こすわけではありませんが、「治療薬の副作用」と「最初の診断」の2つの点で深い関わりがあります。
多発血管炎性肉芽腫症とがんの関係
多発血管炎性肉芽腫症(GPA)そのものが、直接がんに変化したり、がんを引き起こしたりするわけではありません。しかし、海外の1,000人規模の追跡調査などでは、この病気の患者さんは一般の方と比べてがんにかかるリスクが約2倍高いと報告されています。これは主に、病気を抑え込むために使う強力な「治療薬」の影響が大きいと考えられています。
治療薬によるがんのリスク
この病気の激しい炎症を鎮めるため、治療には「シクロホスファミド」という強力な免疫抑制薬よく使われます。この薬は命を救うために非常に有効ですが、長く使い続けると次のようながんのリスクを上げてしまうことがわかっています。
- 膀胱(ぼうこう)がん: シクロホスファミドの成分は膀胱にダメージを与えやすく、使用開始から10年で約5%、15年で約16%の人が膀胱がんを発症したというデータもあります。
- 皮膚がんや血液のがん: 免疫を抑える状態が長期間続くことで、皮膚がん(扁平上皮がん)や、白血病、悪性リンパ腫といった血液のがんのリスクも高まるとされています。
診断時に「がん」と見分けることの重要性
もうひとつの重要な関わりは、病気を特定する「診断時」です。多発血管炎性肉芽腫症では、肺や鼻に炎症の塊(肉芽腫)ができたり、血液検査で特殊な異常(ANCA陽性)が出たりしますが、実は一部の悪性腫瘍(がん)や重い感染症でも、これとそっくりなサインが出ることがあります。
そのため、医師は治療を始める前に「これは多発血管炎性肉芽腫症によるものか、それとも隠れたがんが原因ではないか」を、画像検査や組織検査で慎重に見分ける必要があります。
治療後も続く経過観察の大切さ
特に「シクロホスファミド」による治療を受けたことのある方は、治療が無事に終わって数年が経ったあとでも、長期的な注意が必要です。
目で見える「血尿(おしっこに血が混じる)」や、排尿時の違和感がサインになることが多いとされています。もし、こうした症状に気づいたときは、膀胱のトラブルやがんの初期症状の可能性があるため、自己判断で放置せず、早めに主治医や専門の医療機関にご相談ください。
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(参考文献)
難病情報センター.“多発血管炎性肉芽腫症(指定難病44)”.厚生労働省.https://www.nanbyou.or.jp/entry/4011,(参照 2026-08-18).
川嶋聡子.“多発血管炎性肉芽腫症(GPA)”.日本リウマチ学会(JCR).https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/gpa/,(参照 2026-08-18).
Knight A, et al. Cancer incidence in a population-based cohort of patients with Wegener's granulomatosis. Int J Cancer. 2002, 100, p.82-85.
Talar-Williams C, et al. Cyclophosphamide-induced cystitis and bladder cancer in patients with Wegener granulomatosis. Ann Intern Med. 1996, 124, p.477-484.
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京都大学iPS細胞研究所 呼吸器内科
山形 昂 監修
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